今回は、あらためて知りたいオンライン学会(WEB学会)のメリット・デメリットや、開催までのスケジュールの流れなどを解説します。またオンライン学会で想定されるトラブルもご紹介します。ちなみに現地開催、もしくはハイブリッド開催される場合は、こちらの記事がおすすめです。▼学会の運営方法とおすすめスケジュール!現地開催やハイブリッド開催版もオンライン学会(WEB学会)とは?オンライン学会(WEB学会)とは、会場を用意して発表者と参加者が現地に集う現地開催方式ではなく、オンライン上だけで行なう学会のこと。オンライン学会では、発表者も参加者もzoomなどの配信ツールを使ってオンライン上で参加します。ポスターや要旨もオンライン上に掲示し、参加者はそれを閲覧します。質疑応答や交流は主にチャットで行います。オンライン学会(WEB学会)のメリットとデメリット学会の開催場所をオンラインに移行することで、運営者側にはさまざまなメリットがあります。オンライン学会の、現地開催と比べたメリットとデメリットをみていきましょう。オンライン学会(WEB学会)のメリットまず大きな利点は、学会にかかるコストを大幅に削減できることです。会場や備品・機材のレンタル費はもちろん、当日の人件費(会場の受付スタッフ、誘導スタッフ、撮影スタッフなど)や、ポスターと要旨集の印刷費なども不要になります。さらに現地開催では会場のキャパシティを考慮しないといけませんが、オンラインなら座席は不要です。収容上限人数を気にせず、より多くの参加者を募ることが可能です。ただし配信ツールによっては上限1,000人など決められているものもあるので、事前に確認しましょう。オンライン学会(WEB学会)のデメリット一方デメリットは、現地開催に比べて参加者同士の交流が希薄になってしまうことです。学会への参加は、発表を聴くだけではなく、同じような研究者や参加者の人たちと議論を深めたり交流して人脈を広げたりする目的もあります。しかしオンライン上での開催になると、そうした交流が難しくなります。1対1で直接会話する機会や、学会後の打ち上げで交流することができません。加えて、現地開催のように同じ空間に多くの人たちが集まることがないので、臨場感がどうしても薄れてしまう懸念点もあります。参考:オンライン学会(WEB学会)の開催とは?|オンラインならではの特徴や利点などオンライン学会(WEB学会)の開催形式の種類一口にオンライン学会といっても、配信の形式によりいくつか種類があります。オンライン学会の主な種類をご紹介します。フルリモート形式フルリモート形式のオンライン学会は、発表者、参加者、運営者など全員がオンラインで参加する形式です。会場手配や機材のレンタル・搬入搬出、ポスター掲示などがないので、運営の準備にかかる人員や時間、コストを大幅に削減できます。デメリットとしては、学会当日に配信トラブルが発生する可能性があることです。インターネット環境が安定せず発表が途中で途切れる、音声が聞こえない、発表資料が映らないなどさまざまな配信トラブルが考えられるので、トラブルが発生した際の運営での対応を準備しておきましょう。ハイブリッド形式オンライン学会に現地開催もプラスして同時開催するのが、ハイブリッド形式の開催方法です。オンラインと現地開催両方のいいとこ取りの形式で、参加者は遠方でも気軽に参加しつつ現地の盛り上がりも感じられます。さらに、好きな参加方法を選べるので参加のハードルが下がり、参加人数が増えやすいメリットもあります。しかし運営者側にとっては、オンラインと現地両方の開催準備や当日の対応を同時に行わないといけないので、他の開催形式に比べ負担が大きくなります。オンラインと現地それぞれの準備・運営フローを作成して人員を配置し、当日は連携しながら進めていく必要があります。関連記事:学会のハイブリッド開催|現地とオンラインのいいとこ取りの方法オンデマンド形式オンデマンド形式のオンライン学会では、事前にあらかじめ講演や発表を録画しておき、学会当日はその録画した動画を配信します。一部の発表だけ録画した動画を配信し、他はライブ配信する場合もあります。オンデマンド形式のメリットは、事前に発表を録画できるので間違えても撮り直しがきくことです。当日の急な配信トラブルや機材トラブルの心配もないので、運営の負担も減らせます。一方で、学会当日に発表者と参加者がリアルタイムで交流しづらいデメリットもあります。関連記事:学会のオンデマンド配信とは|メリットや著作権を解説オンライン学会(WEB学会)の動向新型コロナウイルスの感染拡大中はオンライン開催やハイブリッド開催にしていましたが、徐々に現地開催に戻してきている学会が増えています。学会システムの「らくらくカンファレンス」を導入いただいた学会の開催状況をみると、2022年上半期から2023年上半期までの開催タイプごとの割合は、下記のとおりです。コロナ禍真っ只中だった2022年上半期には現地開催はゼロで、ハイブリッド開催が7割ほど、オンライン開催が3割ほどを占めていました。2022年の下半期になると、現地開催も1割程度と少し増えましたが、オンライン開催は引き続き3割程度です。それが2023年になると、オンライン開催は2022年下半期の半分ほどに減り、反対に現地開催が約2倍に回復したことがわかります。ハイブリッド開催に関しては、継続して6割以上をキープしており、3つの開催タイプの中ではもっとも割合が多い状態が続いています。オンライン学会(WEB学会)の運営体制続いてオンライン学会の運営体制を見ていきましょう。まずトップに大会長や実行委員長など、学会全体をまとめる指揮者的な立場がいます。学会の意思決定を担う役割です。その下に、学会の企画やプログラム編成を担うメンバー、運営を全体的に担うメンバーなどがいます。必要があれば広報担当のメンバーも決めます。広報担当は学会の公式Webサイトの作成や、学会の案内のポスターやチラシ、パンフレットの作成などが担当業務です。学会によって必要な役割は異なるので、状況に合わせて検討しましょう。これらの業務は、すべて学会に所属する学会員が担うこともあれば、学会運営専門の代行サービス会社に依頼する方法もあります。オンライン学会(WEB学会)開催までの運営スケジュールオンライン学会の開催が決定したら、早めに準備を始めます。学会の規模にもよりますが、大規模なものだと約2年前から準備をする場合もあります。開催決定から開催終了後までの、スケジュールの流れとやるべきことを順に解説します。それぞれを行うタイミングはあくまでも目安なので、必要に応じて時期を調整しましょう。オンライン学会(WEB学会)開催の1~2年前学会開催が決定したら、まず学会実行委員会を立ち上げます。委員会内の役割や体制は前述のとおりです。実行委員を中心に、今回の学会のテーマや開催日程、プログラムの構成などを決定します。開催方式を、オンラインもしくは現地開催のどちらにするか、もここで決めておきましょう。開催方式は、オンライン・現地開催どちらも同時に行う「ハイブリッド開催」という方法もあります。この場合はオンラインだけではなく、現地開催のための会場の手配や下見、会場に配置する人員確保なども準備する必要があります。参考:学会の運営方法とおすすめスケジュール!現地開催やハイブリッド開催版も学会のテーマや日程、開催方法などが確定したら、来賓客(招待客)へ学会の招待状または招待メールを送付します。オンライン学会(WEB学会)開催の1年前開催1年前になったら、学会の公式Webサイトを作成・公開して情報を開示します。公式Webサイトには、学会の日程開催概要参加費参加登録の方法などの情報を載せておきましょう。必要であれば、学会告知のポスターやチラシ、パンフレットなどの作成にも着手します。パンフレットに協賛企業が広告を出す場合は、依頼の連絡も始めましょう。さらに学会員や関係各所に学会の開催を告知し、招待講演者もこの頃に決めて依頼の連絡をします。学会当日に配信を行う配信ツール(zoomなど)や、参加者同士がコミュニケーションをとるためのツールなども決めておきましょう。オンライン学会(WEB学会)開催の半年前開催半年前になったら、一般参加者の申し込みを開始します。同時に参加費も徴収します。同じタイミングで、演題登録も受付開始します。演題登録の期間はここから約2ヶ月が一般的です。演題登録では、主に下記のような内容を登録します。論文題目(英文表記があることも)発表者の氏名・所属発表者の連絡先共同研究者たちの氏名発表形態(ポスター発表 or 口頭発表)論文の概要(抄録)演題登録を受け付けるにあたって演題登録システムを導入することも考えられます。システムの選び方について、こちらの記事でご紹介していますので参考にしてみてください。参考:演題登録システムの選び方|学会の演題受付や管理を楽にオンライン学会(WEB学会)開催の3ヶ月前開催3ヶ月前になると、演題の登録は締め切られます。そのあと演題の採否決定を行い、採択した演題の発表順を決めて当日のプログラムを編成します。そのプログラムの準備ができ次第、公式Webサイトなどで参加申込者にお知らせしていきます。オンライン学会(WEB学会)開催の1ヶ月前いよいよ開催1ヶ月前です。あらかじめ決めておいた配信ツールを設定し、視聴URLを発行して参加者にメール等で案内します。参加するにあたって入室パスワードが必要なときは、パスワードも忘れずに共有しておきましょう。視聴方法について参加者から問い合わせが入ることもあるので、その対応担当も決めておきます。抄録集(学会で発表される論文の抄録をまとめたもの)もプラットフォーム上に掲載しておきましょう。オンライン学会(WEB学会)開催の当日ついに学会開催当日です。講演中は時間管理と進行を主に行います。オンライン開催だと、当日予期せぬインターネット配信トラブルなどが起こり、発表が遅延もしくは中断してしまう可能性もあります。時間に余裕をもった進行とともに、万が一トラブルが起こってしまった際の連絡・対応フローを事前に決めておくと安心です。当日のトラブルについて詳しくは後述します。参加者同士のオンライン懇親会がある場合は、その案内と進行も行います。オンライン学会(WEB学会)終了後学会が無事終了したら、後日できるだけ早めに、関係各所(来賓客や協賛企業など)にお礼をします。オンデマンド配信をする場合は、動画の編集やアップロード作業にも着手します。さらに収支決算書の作成や精算処理も忘れずに行いましょう。実行委員会のなかで今回の反省会も行い、良かった点や次回への改善点をまとめて、次の開催担当へ引き継ぎをします。オンライン学会(WEB学会)で想定されるトラブルと対策どれだけ念入りに準備しても、学会当日にトラブルが発生してしまうことがあります。想定されるトラブルをあらかじめ洗い出し、運営側で準備できていれば、大事にせずに済むかもしれません。ここでは、オンライン学会で想定されるトラブル例と、その対策をいくつかご紹介します。どのトラブルの場合も、発生したらできるだけ早く運営側でキャッチして対応できるようにしておきましょう。参加URLのミスで参加者が入室できないオンライン学会に参加するための視聴URLは、学会開催の1ヶ月ほど前までに参加者にメールで案内されます。この共有されたURLがまったく違うものだったり、リンクが切れていたりすることがまれにあるようです。対策として、参加者にメールを送る前にリンクのダブルチェックをする当日万が一URLから参加できない場合、どこに連絡をすればよいか事前に案内するなどがあります。発表を行うオンラインツールに入室できない参加URLが正しくても、たまに入室できないことがあるようです。原因はさまざま考えられますが、オンラインツールのバージョンが古い無線LAN(Wi-Fi)もしくは有線LANの接続が悪いホストがミーティングをロックしているホストがミーティングへの参加を許可していないなどがありえます。この対策としては、事前にオンラインツールのバージョンを確認しておきます。ホストが参加者の参加リクエストを許可する設定にしたときは、許可の方法をホストにあらかじめ共有しておきましょう。画面の共有ミス発表時に、発表内容とは異なる資料が画面上に共有されることもありえます。このとき、発表者は画面ではなく自分の手元の資料を見ていて、共有間違いに気付かずに発表が進行してしまうこともあるかもしれません。対策としては、画面の共有間違いに気付いたら、運営側からすぐに発表者に指摘できる体制を整えておくことです。画面の共有におかしい点があったら、運営側(もしくは座長)からすぐ発表者本人に口頭やチャットで伝えられる状態にしておきましょう。相手の音声が聞こえない/自分の音声が相手に聞こえないオンライン開催では、音声トラブルの可能性もあります。参加者に発表者の音声が聞こえない(発表で)発表者に参加者の音声が聞こえない(質疑応答で)などのパターンが考えられます。まずオンラインツール(Zoom ウェビナーなど)の音声設定を確認しましょう。例えばZoom なら、画面の下に表示されているマイクのマークに斜線が入っているとミュート状態です。マイクのマークをクリックすると、ミュートが解除できます。相手の声が聞こえない場合は、同じマイクのマークの右横の「∧」から「オーディオ設定」を選び、「オーディオ」メニューからマイク音量を調整します。オンラインツールの設定が正しいにも関わらず、まだ音声トラブルが解決しないときは、デバイス(パソコンやスマートフォン)本体の音声設定を確認しましょう。パソコンの音声設定の確認方法を、WindowsとMacそれぞれで解説します。▶Windowsの音声設定の確認方法デスクトップ左下のメニューから「設定」>「システム」をクリックします。左のメニューバーの「サウンド」を選ぶと、「出力」と「入力」があります。「出力」→スピーカー(相手の音声が聞こえない場合)「入力」→マイク(自分の音声が相手に聞こえない場合)が正しく設定されているかを確認しましょう。▶Macの音声設定の確認方法まず画面左上のApple メニューから「システム環境設定」を選択します。「サウンド」のアイコンをクリックします。「出力」タブをクリックし、「内蔵スピーカー」を選択します。このとき内蔵スピーカーが表示されない場合はAppleサポートに問い合わせましょう。相手の音声が聞こえない場合は、この「出力」の主音量部分のスライダが低音、もしくは消音になっている可能性があります。反対に自分の声が相手に届いていない場合は、「出力」の1つ右にある「入力」を同様にチェックしましょう。これらの設定を当日慌てて確認することのないように、学会前の案内メールに当日の音声設定についても記載すると親切です。例えば参加者の方には、「当日入室するときは、Zoomの音声をミュートにしてください。質問などで発言する際は都度ミュートを解除してください」「当日参加する前に、ご自分のデバイスのスピーカーとマイクが正しく接続されているか確認してください」などをあらかじめ案内するとスムーズです。それでも当日トラブルが発生した場合は、どこに連絡すればよいかの連絡先も明記しましょう。途中でオンラインの接続が切れる(強制的に退室になる)無線LAN(Wi-Fi)もしくは有線LANの接続状態が悪く、発表途中でオンラインの接続が切れて強制的に退出になることもあります。対策として、発表中に急に接続が切れて退室してしまった人でも、発表途中からすぐ再入室できるようにホストが準備しておくことが大切です。学会運営システム「らくらくカンファレンス」で学会準備をもっと楽に!学会では、開催までにさまざまな準備があります。そこでおすすめなのが、学会運営システムの「らくらくカンファレンス」です。らくらくカンファレンスは、学会開催に必要な工程を1つのシステムにまとめています。演題の登録、参加者の申し込み受付や参加費の徴収といった事前準備から、学会開催当日の発表や交流の場にもなります。さらに会期後のオンデマンド配信まで対応可能。らくらくカンファレンス1つですべて管理でき、学会の運営負担が減って楽になります。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|学会のためのシステム&運営代行