学会の座長は、セッションをスムーズに進行するために不可欠な存在です。本記事では、学会における座長の役割や、台本の構成例などについて解説します。学会の座長になった方は、ぜひ参考にしてください。学会の座長とは?役割は?学会の座長とは、学会のセッションにおける司会進行役です。学会では、複数の発表をまとめたセッションがあります。そのセッションごとに、進行管理と司会をするのが座長の役割です。司会として、セッション開始や終了の挨拶、発表者の紹介、質疑応答の対応などを行います。さらに進行管理として、各発表が決められた時間通りに終わるようにタイムキーピングもしなければなりません。決められた時間内に発表が終わるようにするためにも、学会当日までにあらかじめ座長用の台本を作成しておくと、学会当日にスムーズに進行しやすくなります。学会の座長と司会の違いとは?前述のとおり、学会の座長は司会進行も行いますが、学会によっては司会のみ別で担当者がいることもあります。学会の司会とは、学会全体の案内やアナウンスを行う人です。時間通りに学会が進行するように全体案内をします。発表内容について専門的な質問や回答などはしません。一方の座長は、自分の担当するセッションの時間管理や進行を行います。発表に関する質疑応答に対して、座長自ら質問や回答をすることもあるため、発表内容についてある程度の専門知識が求められます。座長の台本構成・当日の進行マニュアル座長における当日の進行の流れを解説します。この流れを参考に台本を作成しておけば、学会当日もスムーズに進行しやすくなるでしょう。ただし下記の進行の流れはあくまでも基本的なものなので、学会によっては多少異なることも。オンライン開催か現地開催かで内容が変わることもあります。内容は、学会に合わせて適宜調整してください。開始時間の案内セッションの開始時間が近づいたら、開始時間のアナウンスを行います。▶使えるフレーズ例:・あと10分で開始します。・本セッションは、〇時から開始しますので、もうしばらくお待ちください。セッション開始の挨拶開始時間になったら、セッション開始の旨を挨拶しましょう。セッションが今からスタートする旨をはっきりアナウンスします。▶使えるフレーズ例:・それでは開始時間になりましたので、○○のセッションを始めます。座長(自分)の自己紹介セッション開始の旨を告げたあとは、まずは座長である自分の自己紹介を簡潔に行いましょう。自分の所属組織と名前を伝えるだけで十分です。▶使えるフレーズ例:・本日座長を務めます、○○(所属組織)の○○(自分の名前)と申します。よろしくお願いいたします。セッションの発表時間のアナウンス自己紹介のあとは、さっそく各発表に入ります。1つ目の発表を開始する前に、まずは今回のセッションでの各発表時間をアナウンスしておくと良いでしょう。ここでは、各発表の持ち時間と、質疑応答の時間をアナウンスします。また発表中に残り時間をベルなどで知らせる予定があれば、このタイミングでその旨をアナウンスしておきましょう。発表者にとっても再確認になり、心の準備がしやすくなります。▶使えるフレーズ例:・今回のセッションですが、各自発表時間は〇分、そのあと質疑応答の時間が〇分になります。・各発表の残り時間が5分になったら、ベルでお知らせします。・時間内に終わるようにご協力よろしくお願いいたします。1:発表者の紹介ここからは発表本番です。発表者の所属組織と名前、演題名をアナウンスしてから、発表者にバトンを渡します。▶使えるフレーズ例:・次の発表者は、○○(所属組織)の○○(発表者の名前)さんです。演題名は「○○」です。よろしくお願いいたします。2:発表のタイムキーピングここからが座長にとって特に重要な時間です。発表が始まったら、発表を聞きながら時間管理を常に意識し、持ち時間内に発表が終わるように管理します。残り時間が迫ってきたら、ベルなどで合図するか、口頭でその旨を伝えて、発表者に残り時間が少ないことを知らせます。▶使えるフレーズ例:・残り時間5分です。・申し訳ありませんが、そろそろお時間です。3:質疑応答発表が終わったら、そのまま質疑応答の時間になります。発表が終わってからいきなり質問を募るのではなく、まずは発表者に対するお礼を述べて、座長である自分の感想を一言伝えるとベターです。そのあと質疑応答に入りましょう。質問者がいた場合は、指名された本人が自分だとわかるように、手などを使って質問者を指します。質問者には、所属組織と名前を言ってから質問してもらってください。質疑応答で参加者からまったく質問がなければ、座長から質問することもあります。質問内容について詳しくは後述します。▶使えるフレーズ例:・○○先生、発表ありがとうございました。非常に興味深い内容で、私も勉強になりました。・では質疑応答の時間に入らせていただきます。・今の発表に対して質問がある方は挙手お願いします。4:次の質問へ移す質疑応答が終了したら、その場を締めて、次の発表に移ります。発表者に向けて拍手も行いましょう。ここでも座長の役割としてもっとも大切なのは、時間通りに質疑応答を終わらせて次の発表を始めることです。質疑応答が盛り上がってなかなか収集がつかなくなった場合も、時間がない旨を伝えて、その場を締めなければなりません。▶使えるフレーズ例:・○○先生、大変興味深い発表をありがとうございました。・時間ですので、次の発表に移らせていただきます。・他にご質問ある方は、セッション後に発表者に直接お願いします。ここまでの「1:発表者の紹介」~「4:次の質問へ移す」までの流れを、各発表ごとに繰り返します。セッション終了の挨拶すべての発表が終わったら、セッション終了の旨をアナウンスして終了です。▶使えるフレーズ例:・以上ですべての発表は終了です。・発表者の皆さま、参加者の皆さま、どうもありがとうございました。・次のセッションは〇時から開始です。座長を務める際のポイント最後に、座長を務める際のポイントを解説します。時間管理を徹底する座長の役割のなかでも、特に重要度が高いのが時間管理です。座長は学会当日のタイムキーパーでもあります。事前に発表の開始時間・終了時間を把握しておき、各発表が時間内に終わるように進行することが非常に重要です。各発表の開始時間や終了時間は、台本に明記しておき、当日も都度確認しましょう。また発表中は、時計だけではなく、タイマーツールを使うと時間管理がしやすくなります。終了5分前にベルでお知らせするものなど、便利な機能が付いているタイマーツールがおすすめです。学会で使えるタイマーツールについては、下記の関連記事も参考にしてください。関連記事:学会で使えるタイマーを紹介!時間管理(タイムキーピング)のポイントも事前に資料を読み込み準備しておく抄録(しょうろく)は要旨(ようし)ともよばれ、学会の発表内容の要約が記載されています。抄録を読むだけで、当日のすべての発表内容の概要が確認できます。当日のセッションをスムーズに進行するためにも、事前の抄録の読み込みは欠かせません。抄録を事前に確認し、自分が担当するセッションの発表内容を把握しておきます。また各発表者の名前や演題名などを読み間違えないように、読み方が不確実なものは事前確認して台本にも記しておきましょう。抄録については、ぜひ下記の関連記事もチェックしてください。関連記事:学会の抄録とは?|書き方や注意点をくわしく解説当日のトラブルを想定しておく学会当日には、トラブルが発生する可能性もゼロではありません。例えば、時間になっても発表者が来ない、発表者が異なる資料を画面共有しながら発表を進める、質疑応答が白熱して収集がつかなくなる、といったトラブルが考えられます。また国際学会であれば、発表者が参加者から英語で質問された内容を聞き取れず、回答に詰まることもありえます。その際、座長が質問内容を発表者にわかりやすく伝えることもあるようです。座長は滞りなくセッションを進行する役割があります。あらかじめ当日起こりそうなトラブルを想定しておき、万が一起こった際の対応を先に考えておきましょう。発表ごとに質問を考えておく上記のようなトラブルとまではいかなくとも、質疑応答で参加者からまったく質問がないこともありえます。参加者から質問が1つもなければ、座長から質問するのが一般的です。自分のセッションの発表それぞれに対して、念のため質問を用意しておくと安心です。座長から聞く質問内容としては、下記のようなものが多いです。・あなたの研究からはどのような示唆が得られますか?・あなたの研究は、○○(同分野の他の研究)とどのような比較ができますか?・今回の分野において、今後どのような研究が必要だと思いますか?もちろん上記は一例なので、他にも自分が気になった点や、参加者が気になりそうな点を質問しましょう。「らくらくカンファレンス」でスムーズな質疑応答をサポート座長は常に時間や発表者、参加者たちに配慮しなければならず、とても責任のある役割です。本記事で紹介したような事前準備をして、台本で当日の流れとフレーズを考えておくことで、学会当日に安心して務めることができます。スムーズな学会の進行には、「らくらくカンファレンス」がおすすめです。ビデオ通話やコメント機能で、質疑応答などもスムーズに進行するようサポートします。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|スマートな学会運営の伴走者