学術集会の運営に使うシステム(一般に「学会システム」と呼ばれる)は10社以上が提供しており、それぞれ機能・料金・対応規模が異なります。「どこから検討を始めればいいか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、学術集会運営システムを失敗なく選ぶための7ステップ を順を追って解説します。検討初期の大会長・事務局担当者の方向けに、「いま自分は検討プロセスのどこにいるのか」「次に何をすべきか」が明確になる構成にしました。この記事を読むとわかること:「学会システム」と呼ばれるものの2種類(最初の前提整理)学術集会運営システム選定の7ステップフロー各ステップで判断すべき具体的な項目失敗しがちなパターンと回避策開催の何ヶ月前から動くべきかあなたはどちらですか — 運営主体で見るべきポイントが変わる学会システムの選び方は、学会の先生・事務局が自分たちで運営する か、運営会社(PCO等)に運営を委託し、PCOがシステムを操作する かによって、確認すべき優先順位が変わります。学会の先生・事務局が自主運用運営会社(PCO等)に委託し、PCOが運用最優先で見るべき点操作の分かりやすさ・サポート対応の速さPCOが複数案件を横断的に効率よく回せるかつまずきやすい点システムに不慣れなメンバーでも運用できるか案件ごとの設定をどこまでテンプレ化できるか本記事での該当ステップステップ3(機能リスト化)・ステップ6(デモ検証)ステップ4(予算)・ステップ5(候補比較)以下の7ステップは両方に共通するプロセスですが、各ステップの中で該当する視点を意識しながら読み進めてください。0. 前提整理 — まず「どのシステム」を探すか確定する「学会システム」というキーワードは検索ボリュームが多いものの、実は2種類のシステムを指しています。最初に違いを整理しておきます。分類主な機能検討タイミング会員管理システム会員名簿・会費・刊行物管理学会組織の通年運営学術集会運営システム(本記事の対象)演題登録・査読・参加登録・配信・受付大会・学術集会の開催ごと本記事の7ステップは「学術集会運営システム」(=大会運営)の選定プロセスです。通年の会員名簿管理が目的の場合は、本記事の対象外となります。ステップ1: 開催形態を決める学会システム選定は 「開催形態の決定」 から始めます。これが決まらないと、必要な機能が定まりません。4つの開催形態形態特徴必要機能の重点現地中心会場開催、参加者は基本的に現地来場受付・名札・抄録集完全オンライン全員リモート、配信中心配信・チャット・オンデマンドハイブリッド(現地+ライブ配信)現地+オンラインの同時開催現地運営とライブ配信の統合ハイブリッド(現地+会期後オンデマンド配信)現地開催後に映像をオンデマンド公開収録・編集・オンデマンド配信プラットフォーム最近は 「現地+会期後オンデマンド配信」 の形態を採用する学会が増えています。会期当日のライブ配信は行わず、現地で収録した発表をその後オンデマンド配信するスタイルです。参加者は自分の時間に合わせて視聴でき、運営側もライブ配信のトラブルリスクを抑えられます。形態決定の判断軸参加者の地理的範囲(国内のみ/全国/国際)過去開催との連続性(毎年同じ形態 or 変更検討中)予算(ハイブリッドは現地のみ・オンラインのみより高くなる傾向)参加体験の優先度(現地交流重視 vs 多人数参加重視)ステップ2: 規模感を見積もる開催形態の次は 規模の見積もり です。規模の3つの指標指標小規模研究会中規模学会大型・国際学会参加者数〜300名300〜1,500名1,500名超演題数〜100件100〜500件500件超セッション数5〜1020〜5050超規模見積もりの注意点過去開催の実績で見積もる(オンライン化で参加者数が増えるケースあり)演題応募率の見積もり(過去の応募率+10〜20%が目安)オンライン参加者の比率(ハイブリッドの場合、オンライン参加が現地を上回るケースもあり、分野や開催時期によって変わります)「大規模学会向けの比較軸」を中小規模学会にそのまま当てはめない小規模研究会・中規模学会、つまり参加者数1,500名以下を想定する学会では、大規模・国際学会向けの比較軸をそのまま使うと、確認すべき点を見誤ることがあります。査読機能は「必須」とは限らない演題数がおおむね100件以下の学会では、査読割り当て機能を使わず、事務局側で確認・分類して運営できるケースもあります。査読機能の有無を最初から必須条件にするのではなく、採否判定やカテゴリ分類をどこまでシステム化する必要があるかを確認しましょう。年間契約・月額固定費用を前提にしない中小規模の学会システムでは、大会単位で相談・見積もりされるケースも多くあります。一般的なSaaSのように年間契約や解約時の追加費用だけを軸に比較すると、実際の費用感とずれることがあります。導入期間は「カスタマイズの有無」で変わる標準機能中心であれば1〜2ヶ月程度、個別カスタマイズを含む場合は3ヶ月以上かかることがあります。開催日から逆算し、演題登録開始日や参加登録開始日に間に合うタイミングで比較検討を始めましょう(本記事「ステップ7」も参照)。参加者数が増えると、PCO(学会運営代行)への外部委託も検討対象になるらくらくカンファレンスへの実務相談では、参加者1,000人前後を超えるあたりから、PCO委託を含めた運営体制の相談が増える傾向があります。ただし、これは正式な統計ではなく、会場数・セッション数・事務局体制によっても変わります。分野の慣行によっても、確認すべき機能の重みは変わる規模に加えて、分野ごとの発表形式や査読の慣行によっても、必要機能の優先度が変わることがあります。理系学会の中には、演題数が多く、査読が定型化されているケースがありますこの場合は、査読の割り当て・進捗管理を効率化する機能の必要性が比較的高くなります。人文・社会系の学会では、演題数や発表形式、抄録書式の運用が比較的柔軟なケースもあります厳密な査読の運用よりも、シンプルな抄録投稿や、少人数の事務局でも回しやすい操作性を優先したほうが合うことがあります。ただし、これらはあくまで傾向です。同じ分野内でも、学会規模・査読方針・運営体制によって必要な機能は変わります。前述の「規模」の観点と合わせて、自分の学会に必要な機能を判断してください。ステップ3: 必要機能をリスト化する開催形態と規模が決まったら、自分の学会で必要な機能をリスト化 します。主要な9機能チェックリスト機能必要不要演題投稿フォーム□□抄録管理□□査読フロー□□抄録集自動生成□□参加申込・決済□□当日受付(QRコード等)□□名札印刷□□配信(ライブ/オンデマンド)□□会員管理(継続学会向け)□□「あったら便利」と「必須」を分ける機能リストには優先度を付けます:必須: これが無いと運営が止まる重要: 効率化に大きく効くあれば便利: 無くても運営可能「必須」を満たすことは、候補に入れる最低条件になります(予算・サポート体制・導入期間なども合わせて確認しましょう)。ステップ4: 予算を決める予算は学会システム選定の大きな制約になります。学会システムの料金レンジ(参考)規模料金目安含まれる業務範囲〜300名・オンライン30〜100万円演題+配信+参加管理300〜1,500名・ハイブリッド100〜400万円機能網羅1,500名超・大型400万円〜演題管理+配信+参加管理+会員管理+カスタマイズ隠れコストを見落とさない公開料金には含まれていない可能性のあるシステム関連費用:配信時間の超過料金(同時接続数オーバー含む)録画データの追加保存料カスタマイズ開発(独自フォーム・独自フロー)多言語対応の追加料金システム利用料とは別に、当日の運営スタッフ手配などシステム外の人的サービスが必要になる場合もあります。見積もり段階で「システム利用料と外部サービス費用を合わせた総額」を確認しましょう。ステップ5: 候補3〜5社をリストアップ機能・予算が決まったら、候補となるシステムを3〜5社 に絞ります。リストアップの観点対応形態(オンライン/ハイブリッド/現地)が自分のニーズに合う対応規模で実績がある必須機能を全て満たす料金レンジが予算に合う公開情報・口コミで評判が極端に悪くない運営会社(PCO等)が複数の学会・大会を横断的に運用する場合は、上記に加えて以下の観点も比較対象になります。過去案件の設定を新しい案件にどこまで流用できるか(テンプレート化)複数の学会・大会を並行して管理できる権限設計になっているか案件ごとに担当者を割り当てる権限管理が可能か主要システム6社(参考)本記事では、国内で広く利用されており、公式情報で機能・実績が確認できるシステム を選定基準として6社を取り上げています。1. らくらくカンファレンス 2. Confit 3. Convention Connect 4. AWARD 2.0 5. 学会バンク 6. SMART Conference開催形態への対応範囲は各社で異なるため、自分の開催形態に対応しているかを個別に確認してください。ステップ6: デモ・トライアルで実機検証候補3〜5社が絞れたら、実際に触って検証 します。査読管理までフル機能で試せるシステムは少ないため、問い合わせて画面を見せてもらう・マニュアルで確認すると良いでしょう。デモで確認すべき7項目#確認項目チェック方法1操作の直感性事務局メンバー全員で触る2演題投稿フォームの使い勝手研究者目線でテスト投稿3査読フローの実装査読委員役で実機演習4当日のオペレーションシミュレーション5データ書き出し(CSV等)実際に書き出してみる6カスタマイズ可能性自分の独自要件を伝えて見積もり7サポート品質質問への返答スピードデモは複数人で事務局担当者だけでなく、研究者役・査読者役・当日運営役 の複数人で触ると、見落としが減ります。ステップ7: 契約・初期設定最終1社が決まったら契約に進みます。契約書で確認すべき項目:契約書の重要チェック項目料金の内訳(基本料金、オプション、超過料金の規定)当日サポート体制(時間帯、対応方法、平均対応時間)障害発生時の責任範囲(補償の有無)データの所有権(学会データはどちらの所有か)解約条件(次年度更新の自動化、解約時のデータ引き渡し)初期設定で重要なことテスト用の演題で全フローを試運転事務局メンバーへのトレーニング本番前の負荷テスト(同時接続数の確認)失敗しないための4つの心構え最後に、選定全体を通じて心がけるべきポイントです。心構え1: 機能の多さに惑わされない「機能が多い=良いシステム」ではありません。使いこなせない機能は逆に負担になります。必要機能を満たす中で、最も操作が簡単なものを選びましょう。心構え2: 当日サポートを軽視しない学会当日にトラブルが起きると、それまでの準備が水の泡になります。契約前に「障害発生時に誰がどう対応するか」を明文化してください。心構え3: 長期視点で選ぶ同じ学会・大会が継続開催される場合は、「今年だけ」の判断ではなく3〜5年使い続ける前提で選びましょう。過去の演題データや参加者名簿を蓄積し続けられることや運営ノウハウの継承を考えると、毎年システムを変えるのは非効率です。心構え4: 一次情報を取りに行く公開資料や口コミだけで判断せず、自分と似た規模・分野の学会で導入実績のあるシステムを選び、可能なら導入元の事務局に直接話を聞きましょう。まとめ — 7ステップの全体像ステップやること1. 開催形態決定現地/オンライン/ハイブリッドを確定2. 規模見積もり参加者・演題・セッション数を想定3. 必要機能リスト化9機能のうち必須を選定4. 予算決定全部込みの予算を設定5. 候補3〜5社リスト機能・予算で絞る6. デモ・トライアル実機検証+複数人で触る7. 契約・初期設定契約書精査+テスト運用開催の 6〜10ヶ月前 から始めるのが理想的なスケジュールです。学会システムの導入をご検討中の方へ「らくらくカンファレンス」は、現地開催からオンデマンド配信まで、さまざまな開催形態に対応した学会システムです。小規模から大規模まで、規模を問わずに対応 していますので、要件整理から候補比較までお気軽にご相談ください。関連記事学会運営にかかる費用を解説|ハイブリッド開催の費用面のメリットも学会の運営方法とおすすめスケジュール演題登録システムの選び方|学会の演題受付や管理を楽に学会受付システムの機能とは|システム導入のメリットや選ぶポイント学会のオンデマンド配信とは|メリットや実施のポイント