「科研費」は、学術研究の発展を目的とし、日本学術振興会が行っている補助金事業です。科研費の交付を受けるには、正しい方法で申請をして、かつ審査に通らなければなりません。今回は、科研費の申請スケジュールや申請方法、申請する際の注意点などを解説します。近年、研究費を集める手段として、「産学連携」や「大学発ベンチャー」が注目されています。以下の記事で詳しく紹介していますので、ご関心がある方はあわせてお読みください。参考記事・大学発ベンチャーとは?成功事例の特徴や、メリットを解説・産学連携(産学官連携)とは?メリットや事例を解説|産学協創との違いも科研費とは?「科研費(かけんひ)」とは、文部科学省の所管にある「日本学術振興会」が行っている事業です。正式名称は「科学研究費助成事業」で、略して科研費とよばれています。科研費の目的は、さまざまな研究分野における独創的で先駆的な研究の発展です。科研費として研究資金を援助することで、さらなる学術研究の発展に貢献します。研究者が科研費を交付してもらうためには、毎年日本学術振興会が行なっている科研費の公募に申し込む必要があります。申し込まれた内容は審査委員によって審査され、審査を通過して採択されたものだけに科研費が交付されます。科研費の特徴や種類に関しては、下記の関連記事でも詳しく解説しています。関連記事:科研費とは?科研費ハンドブックに沿って、特徴や種類をわかりやすく解説科研費の申請スケジュール科研費の申請受付は、1年に1度行われます。申請スケジュールは、日本学術振興会の公式Webサイトで発表されます。例えば、令和6(2024)年度の科研費申請スケジュール予定は、下記のとおりです。参照:科学研究費助成事業(科研費) スケジュール科研費には研究種目がいくつかあり、それぞれスケジュールが少し異なります。上記スケジュール図の1番左にある、「特別推進研究」「基盤研究(S)」「基盤研究(A)」などの黄緑色の部分が研究種目です。研究種目については下記の関連記事でも解説しています。関連記事:科研費とは?科研費ハンドブックに沿って、特徴や種類をわかりやすく解説令和6(2024)年度の科研費では、前年の令和5(2023)年の4~9月に公募を受付し、令和6(2024)年の1月頃まで書面審査や合議審査などが行なわれます。公募から審査までは、文部科学省が実施します。審査が完了して採択の可否が決定すると、同年2月頃に審査結果が通知されます。4月に交付が内定すると、6月にかけて交付申請期間になり、交付が決定される流れです。科研費の研究種目のなかには、「研究活動スタート支援」のように、令和6(2024)年の3~4月頃に公募を受け付けるものもあります。「特別推進研究」「基盤研究(S)」だと公募受付は令和5(2023)年の4~6月頃なので、研究種目によって1年ほど公募期間が異なることがあります。科研費への申請を決めたら、まずは自分が応募したい研究種目を決め、その研究種目のスケジュールを確認しましょう。科研費の申請前の確認事項科研費に申請する前に、まず確認しておくべき点を2つ解説します。応募資格まずは自分が科研費の応募資格対象に入っているかを確認しましょう。科研費に応募するには、下記の①および②の条件を満たしていることが求められます(平成23年6月時点での情報)。参照:Ⅲ 応募される方へ/日本学術振興会研究種目によっては、上記条件と異なることもあります。自分の応募する研究種目の応募条件を確認しましょう。関連記事:科研費とは?科研費ハンドブックに沿って、特徴や種類をわかりやすく解説科研費電子申請システム(e-Rad)のIDとパスワード科研費の申請は、「科研費電子申請システム(e-Rad)」からオンライン上で行います。申請システムにログインするには、ログインIDとパスワードが必要です。ログインIDとパスワードは、応募者である研究者が所属する研究機関の、事務担当者に発行依頼をして受け取ります。事務担当者が発行手続きを完了すると、応募者(研究者)宛てにメールが届きます。メールのなかに、ログインIDとパスワードの記載があります。一度付与されたログインIDとパスワードは、研究機関を異動しなければ何度でも使用可能です。科研費の申請方法続いて、実際に科研費申請をするフローを簡単に解説します。1.科研費電子申請システムにログインまずは、「科研費電子申請システム(e-Rad)」にアクセスします。「研究者 ログイン」というボタンがあるので、そこから前述のログインIDとパスワードを入力してログインします。参照:科研費電子申請システム2.交付申請情報を入力ログインすると、申請情報を入力する画面になるので、自分が希望する研究種目を選択して必要情報を入力しましょう。さらに科研費の応募書類である「研究計画調書」も作成します。研究計画調書は前半と後半に分かれており、前半は科研費電子申請システム(e-Rad)上で入力します。応募する研究分野や研究課題名、研究に必要な経費、経費の必要性などを同システム上で入力していきます。後半はWordやPDFデータで別途書類を作成し、同システム上にアップロードします。この書類には、研究目的や研究計画、研究方法などを記載します。WordとPDFのフォーマットは、日本学術振興会の公式Webサイトからダウンロードできるので確認しましょう。参照:科学研究費助成事業(科研費) 公募情報3.入力内容の確認必要情報を入力し、研究計画調書のアップロードまで完了したら、交付申請書と交付請求書(または支払請求書)のPDFデータをダウンロードします。このPDFデータで、申請内容に不備がないかしっかりチェックしましょう。4.交付申請書を送信PDFデータで内容に不備がないことを確認したら、自分の所属している研究機関、もしくは部局担当者に交付申請書と交付請求書(または支払請求書)を送信します。科研費電子申請システム(e-Rad)上で送信できます。送信が正しく完了すると、画面上に「交付申請書・交付請求書情報送信完了」と表示されるので、そこまで確認しましょう。これで申請は完了です。ちなみに交付申請の処理状況は、同システムにログインすることでいつでも確認できます。5.審査結果の確認申請された内容は、書面審査や合議審査、ヒアリングなどを経て採択が可決されます。審査結果は、申請時に使用した科研費電子申請システム(e-Rad)上に開示されます。開示期間はあらかじめ決まっているので、必ず期間中に同システムにログインして結果を確認しましょう。なお、審査結果に関しての質問や照会は一切受け付けられません。参照:科研費電子申請システム科研費申請の注意点科研費を申請する際の注意点を解説します。科研費申請の際に参考にしてください。科研費では購入できないもの科研費は、採択された研究課題の遂行に直接必要な経費に使用できます。例えば研究に関する物品の購入費や旅費、人件費などがこれに該当しますが、重要なのはその費用を使わないと研究が遂行できないものである点です。研究遂行に直接関係のないもの、また申請した研究機関以外の機関で購入した物品の費用などは、科研費からは支出できません。年度をまたぐ科研費の使用について科研費には補助金と基金があり、基金は年度をまたいだ使用が可能です。例えば翌年度にかかる出張経費(研究に関係がある出張)や、翌年度に開催される学会への参加費を、前年度の科研費から支出することは可能です。一方で、補助金は年度をまたいでの使用ができません。科研費における謝金について科研費における謝金は、研究遂行に必要な作業として知識や情報などの協力を受ける際に、支払うことができます。例えば、科研費を交付されている研究者が、自分が所属する研究機関の他の研究者から、専門知識や技術の共有を受ける場合は、その提供者に謝金を支給してもOKです。もし学生から協力を受ける場合、その内容が教育機関の一環で行われているのであれば、謝金の支給は認められません。科研費における旅費について旅費は、研究成果発表や研究の情報収集など、研究に関する目的の旅であれば科研費で支出できます。一方、プライベートで友人に会いに行くなど、研究に直接関係のない目的の旅では、科研費からの支出はできません。科研費の不正使用について科研費の使用目的は、前述のとおり研究遂行に直接関わる費用に限られます。例えば研究に関係のない用途のために物品を購入し、その物品購入費を科研費から支出すると、目的外使用として不正使用扱いになってしまいます。科研費の不正使用が発覚すると、使用した金額の一部、もしくは全額を返却する措置が取られます。また不正を犯した本人や共謀者などに、1~10年の科研費応募資格の停止が科せられることがあります。架空請求や他機関での科研費使用など影響が大きい事例だと、該当者を懲戒解雇するなど、より重い措置が取られることもあります。科研費を正しく申請して、研究への有効活用を科研費は、事前にスケジュールや応募資格を確認して正しく申請することで、補助金を受け取れる可能性がある貴重な制度です。本記事を参考に、正しい目的をもって正しく申請しましょう。ちなみに研究の成果発表の場として学会がありますが、その準備運営はタスクも多く時間もかかります。さまざまな学会運営業務や当日の進行を1つのシステムで完了できるのが、「らくらくカンファレンス」です。研究成果の発表の場として貴重な学会を成功させるためにも、効率的に学会運営できる同システムをぜひお試しください。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|学会の事前準備から当日の進行や交流までサポート