科研費とは、日本学術振興会が行っている、補助金事業における研究助成金です。科研費を使用するためのルールを解説した「科研費ハンドブック」も公式発行されており、オンライン上で誰でも閲覧できるようになっています。本記事では、この科研費ハンドブックの流れに沿いながら、科研費の目的や応募資格、研究種目などを解説します。近年、研究費を集める手段として、「産学連携」や「大学発ベンチャー」が注目されています。以下の記事で詳しく紹介していますので、ご関心がある方は併せてお読みください。参考記事・大学発ベンチャーとは?成功事例の特徴や、メリットを解説・産学連携(産学官連携)とは?メリットや事例を解説|産学協創との違いも科研費とは?意味と目的「科研費(かけんひ)」とは、「科学研究費助成事業」の略称です。科学研究費助成事業とは、文部科学省の所管にある「日本学術振興会」が行っている事業です。毎年、日本学術振興会が全国の研究者から公募を募り、審査を通過して採択されたものに研究資金の援助を行っています。科研費の歴史はとても長く、大正7年(1918年)に創設された「科学奨励金」を前身に、いくつかの制度を吸収・合併しながら、昭和40年(1965年)に「科学研究費補助金」として一本化されました。科研費の目的は、学術研究の発展です。人文学・社会科学・自然科学などすべての分野において、基礎だけではなく応用まで含めた独創的・先駆的な研究を発展させていくための助成金とされています。「科研費ハンドブック」とは?「科研費ハンドブック」とは、科研費の使用に関するルールをわかりやすく解説しているハンドブック(解説書)です。文部科学省と日本学術振興会が共同作成しており、文部科学省の公式Webサイト上で誰でも自由に閲覧・ダウンロードができます。電子ブックとPDFデータがあるので好きなほうを選びましょう。オンラインデータなので、常に最新版に更新されます。このハンドブックは研究者用・研究機関用に作成されており、すでに科研費による研究を行っている方や、これから科研費を申請しようと考えている方が対象です。参照:科研費ハンドブック(研究者用・研究機関用):文部科学省科研費の応募資格科研費に応募するには、下記の①および②の条件を満たしていることが求められます(平成23年6月時点での情報)。参照:Ⅲ 応募される方へ/日本学術振興会「e-Rad」とは、科研費の応募を行う「科研費電子申請システム」です。また研究種目によっては上記と応募資格が異なることもあります。応募する際は公募要領をよく読み、自分が応募する研究種目に該当する応募資格を必ず確認してください。科研費の研究種目に関しては次の章で解説します。科研費の研究種目(種類)科研費にはいくつかの研究種目があり、申請する際に、どの研究種目を希望するかを申請者が選びます。科研費の研究種目は数が多いので、一部だけご紹介します。参照:研究種目・概要上記は数多くある科研費の研究種目の一部ですが、図からもわかるように、種目によって補助金か基金かが異なります。さらに分担も、日本学術振興会だけが担当するものもあれば、文部科学省が一緒に分担する種目もあります。科研費で申請できる経費の例科研費の取扱要領には、補助金の使用制限に関して下記の記載があります。参照:独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業(科学研究費補助金)取扱要領また科研費ガイドブックの中でも、「直接経費は採択された研究課題の遂行に必要な経費に幅広く使用することができる」とあります。研究課題の遂行に必要な経費とは、・物品の購入費・旅費・人件費・謝金などです。どれも、その経費を使用しないと予定通りの研究が遂行できない、つまり研究に必ず必要な経費であることが重要です。例えば建物など施設に関する経費や、研究代表者または研究分担者の人件費などは、直接経費には認められないので注意しましょう。参照:9. 直接経費は何に使えるのか?_科研費ハンドブック(研究者用)-2022年度版(令和4(2022)年6月版) 科研費の支給額・採択率科研費は実際にどのくらいの金額が支給されるのでしょうか。日本学術振興会が2023年1月31日に更新したデータによると、科研費の予算額の推移は下記のとおりです。参照:科学研究費助成事業(科研費) 科研費データ平成23年度に基金化を導入してから、予算が一気に上がったことがわかります。配分状況の一例でいうと、令和4年度の新規採択分の基盤研究でみた採択率と配分額は、下記のとおりです。研究種目採択率(%)配分額(千円)基盤研究(S)12.33,233,400基盤研究(A)27.45,972,000基盤研究(B)29.517,061,200参照:科研費の配分結果 | 科学研究費助成事業|日本学術振興会また、科研費の主な研究種目における応募件数と採択率の推移は下記のとおりです。参照:科学研究費助成事業(科研費) 科研費データ新規の応募件数は令和2年にかけて徐々に増えていましたが、令和3年から下降気味になっています。採択件数(新規と継続)は平成8年から平成28年まで20年かけて一気に上がっており、平成30年以降もゆるやかに増えています。採択率は、平成18年に21.3%だった割合が平成23年に28.5%に上がってからは、令和4年まで継続して26%前後をキープしています。科研費の申請方法とスケジュール科研費の申請は1年に1度行われており、申請スケジュールなどの詳しい情報は日本学術振興会の公式Webサイトで発表されます。スケジュールは研究種目によって異なります。公募受付期間は、申請する科研費の年度の、前年の4~9月での受付が多いです。申請は「科研費電子申請システム(e-Rad)」というシステムからオンライン上で行うので、あらかじめログインするIDとパスワードを入手する必要があります。IDとパスワードがまだない場合は、応募者である研究者が所属する研究機関の事務担当者に、発行依頼をすることで受け取れます。申請期間内に科研費電子申請システム(e-Rad)にログインして、申請情報を入力し、さらに「研究計画調書」という科研費の応募書類も作成して送信します。この申請時に自分が希望する研究種目を選びます。申請が終わると、審査を経て審査結果が同システム内に開示されます。科研費の申請方法について、詳しくは関連記事で詳しく紹介しているので、こちらもぜひご覧ください。関連記事:科研費の申請方法とは|科研費電子申請システム(e-Rad)での申請方法を解説目的や応募条件を理解して、正しい科研費の使用を科研費の申請や使用は、目的や応募資格をしっかり理解して行いましょう。科研費に関して、他にも以下の記事で紹介しています。あわせてご活用ください。参考記事・科研費の申請方法とは|科研費電子申請システム(e-Rad)での申請方法を解説・【科研費の使い方】直接経費と間接経費の違いとは?購入できるものについてもちなみに研究成果の発表の場として、学会があります。学会開催に関する運営の準備や当日の進行サポートなら「らくらくカンファレンス」がおすすめです。学会運営にかかわる多くの業務を、1つのシステムで簡単に管理できます。学会運営を効率的に行いたい方は、ぜひ下記サイトをチェックしてみてください。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|学会運営を支える一元管理システムと運営サポート