「科研費(かけんひ)」とは、研究助成金の1つです。研究遂行のための費用が補助される貴重な制度ですが、実際にどのような用途に使用できるか、迷う方も多いかもしれません。本記事では、科研費の使い方をわかりやすく解説します。近年、研究費を集める手段として、「産学連携」や「大学発ベンチャー」が注目されています。以下の記事で詳しく紹介していますので、ご関心がある方は併せてお読みください。参考記事・大学発ベンチャーとは?成功事例の特徴や、メリットを解説・産学連携(産学官連携)とは?メリットや事例を解説|産学協創との違いも科研費とは?科研費(かけんひ)とは、補助金事業における研究助成金です。正式名称を「科学研究費助成事業」と言いますが、略して「科研費」とよばれるのが一般的です。科研費は、文部科学省所管の日本学術振興会が運営しています。科研費の申請は、1年に1度だけ、「科研費電子申請システム(e-Rad)」からオンライン上で行うことができます。詳しい申請スケジュールや方法については、下記の参考記事も参考にしてください。関連記事:科研費の申請方法とは|科研費電子申請システム(e-Rad)での申請方法を解説科研費の目的科研費の大きな目的は、学術研究の発展です。特定の分野だけに限定せず、人文学・社会科学・自然科学などさまざまな分野において、基礎だけではなく応用まで含めた、独創的で先駆的な研究を発展させていくことを目的としています。つまり、科研費はあくまでも研究遂行のための助成金なので、研究遂行に直接関係あるものだけに使うことが可能である点に注意しましょう。科研費における直接経費・間接経費の違い科研費には、直接経費と間接経費があります。違いは下記のとおりです。・直接経費:研究遂行に必要な経費(物品購入費、旅費、人件費・謝金など)に使用可能・間接経費:研究機関の管理などの必要経費として使用可能間接経費は、直接経費に対して一定の比率で交付される研究機関のための経費です。直接経費の3割相当額が支給されます。関連記事:科研費とは?科研費ハンドブックに沿って、特徴や種類をわかりやすく解説科研費の使い方【直接経費】科研費の直接経費が使えるのは、採択された研究課題の遂行に直接必要な経費のみです。科研費の直接経費の使い方を解説します。研究に関する物品購入費研究遂行のために必要な物品の購入費は、科研費から出せます。例えば、普段使用する使用するパソコンやタブレット、机、文房具などでも、研究以外の目的で使用する場合は、科研費からは出せないので注意してください。特に、自宅で使うパソコンやタブレット、スマートフォンを科研費が使えると思って購入してしまい、結果的に自己負担になる例もあるので気を付けましょう。研究施設で使う椅子や机、ホワイトボード、文房具、プリンターなど、研究に必要で、通常研究施設であれば備えてあるべき備品の購入は、直接経費ではなく間接経費から出します。間接経費の使い方については後ほど解説します。研究に関する旅費科研費の研究に直接関連する旅費(交通費や宿泊費)であれば、科研費を使うことができます。例えば、・研究成果発表のための学会参加・研究関連の打合せ・研究に関する情報収集などが該当します。旅費はまず自費で支払って、あとから科研費が振り込まれることがほとんどです。そのため、かかった交通費や宿泊費の証明となる出張報告書や領収書などのエビデンスを提出しなければならないことが多いです。ちなみに、科研費の研究に直接関係しない旅費は、科研費から出すことはできません。特に注意すべきは、科研費に関連する旅行に、プライベートの旅行をつなげるパターンです。例えば、科研費の研究発表の学会のために、遠方に行ったとします。これは科研費の研究に直接関わる費用なので、科研費から出せます。しかし、学会のあとに続けてそのまま帰省したり、プライベートな旅行をつなげたりした場合は、延長分の交通費や宿泊費などには科研費は使えないので要注意です。同じ研究でも、科研費に関する研究以外の研究のための滞在費用も、科研費では出せません。研究に関する人件費・謝金科研費における人件費や謝金は、研究遂行に必要な作業として知識や情報などの協力を受ける際に、科研費から出すことができます。例えば、同じ研究組織に属する研究協力者から、専門知識を研究代表者に提供する場合、その専門知識が研究の何に必要なのかが明らかであれば、科研費から謝金を支給できます。また研究者だけではなく、実験補助やアンケートに協力した方、さらに校閲や校正、翻訳などを業務委託などした際などの人件費も、研究に直接関わっているのであればOKです。ちなみに、学生に対しても、研究遂行に必要な作業に対しては人件費や謝金を出せます。ただし、学生に任せた作業が教育活動の一環である場合は、研究ではなく教育に関する活動になるため、科研費から人件費や謝金は出せないので注意しましょう。参照:9. 直接経費は何に使えるのか?_科研費ハンドブック(研究者用)-2022年度版(令和4(2022)年6月版) 科研費の使い方【間接経費】間接経費は、研究者の研究環境の改善や機能向上のために使える経費です。科研費の間接費用の使い方の例として、管理部門や研究部門において下記のような用途に使用できます。・施設の整備や維持、運営経費・備品や消耗品(コピー機やプリンターなど)の購入費・研究者や研究支援者などの人件費・研究の広報活動費・学術誌の購読費・特許出願費用上記はあくまでも一例です。他にも間接経費として使える費用はさまざまあります。重要なのは、科研費の研究を遂行する研究環境や研究期間全体の機能向上のための費用である点です。また、直接経費に該当するものは、間接経費には入れません。参照:10. 間接経費とは?_科研費ハンドブック(研究者用)-2022年度版(令和4(2022)年6月版) 使い方を理解することで、より有効な科研費の使用を科研費は使い方や規定が細かく難しい部分もありますが、そもそもの目的を理解し、使い方のルールを守ることで、研究遂行をより効率的にサポートする制度です。本記事を参考に有効に科研費を使用しましょう。また、科研費の使用方法について不明点があれば、自分の大学の事務局などに必ず確認してから使用してください。「らくらくカンファレンス」は、学会開催の準備や当日の進行をスムーズにサポートするツールです。科研費に関する情報も含め、「お役立ちコラム」で研究者向けの情報も発信しているのでチェックしてみてください。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|学会の運営をワンストップ管理