「学会の大会長を任されたが、何から始めればよいか分からない」「演題募集は何ヶ月前から始めるのが正解?」——大会長や事務局スタッフが初めて学会運営を担当するとき、最も悩むのが 全体スケジュール です。学会運営は 開催の12ヶ月前から始まる準備フェーズと、当日・事後の運営フェーズ で構成されます。各フェーズで取り組むべきタスクを取りこぼすと、後工程が連鎖的に遅れ、最悪の場合は開催直前のトラブルにつながります。本記事では、学会運営の全工程を時系列で網羅 したスケジュールガイドをまとめました。チェックリスト付きで、そのまま進捗管理に使えます。この記事を読むとわかること:学会運営の全体タイムライン(12ヶ月 → 当日 → 事後)各フェーズで取り組むべき具体タスク期間別に「やりがちな失敗」と対策進捗管理に使えるチェックリスト1. 学会運営の全体タイムライン大会によって進行はそれぞれです。前回大会・過去大会を振り返り、例年のスケジュール感を把握したうえで検討を進めるのが安心です(過去の大会ホームページも参考にします)。参加者にとっても「例年通りのスケジュール感」を想定している方が多いため、既存の流れを大きく変える場合はその点を意識した周知が必要です。そのうえで、開催の12ヶ月前から事後フォローまで、大まかには7つのフェーズに分かれます。フェーズ期間主な内容①計画12〜10ヶ月前テーマ・大会長・会場・予算決定②基盤整備10〜6ヶ月前システム契約・スポンサー営業・HP公開③演題募集6〜3ヶ月前募集要項・査読体制・参加申込開始④詳細準備3〜1ヶ月前抄録集制作・運営マニュアル・リハーサル⑤直前1ヶ月前〜開催前日最終確認・スタッフ研修・搬入⑥開催当日受付・進行・トラブル対応⑦事後開催後1〜3ヶ月録画公開・アンケート・決算・次回引き継ぎ各フェーズの詳細を次章以降で解説します。※本タイムラインは、複数の公開情報、学会運営現場の知見、過去大会の公開タイムラインにもとづき整理したものです。実際の運用は学会の規模・性質によって調整してください。2. 開催12〜10ヶ月前: 計画フェーズ学会開催の根幹を決める重要フェーズです。ここでの決定がそれ以降全工程に影響します。2-1. テーマ・大会長決定学会全体のテーマ・コンセプト大会長・副大会長の決定学術委員会・実行委員会の組成大会ポスターの企画・制作 (テーマが決まり次第着手。参加者・関係学会への周知ツールとして使用。デザイン会社への発注 or 内部制作で対応するケースが多くみられますが、制作しない大会もあるため、自学会の慣行を確認しましょう)2-2. 開催地・会場仮押さえ開催地の選定(参加者の地理的分布を考慮)主会場・サブ会場の仮押さえ宿泊施設の手配(特に地方開催の場合)2-3. システム選定開始学術集会運営システム(一般に「学会システム」と呼ばれる)の選定を始めます。選定には 3〜4ヶ月 かかるため、早めの着手が必須です。必要機能の洗い出し3〜5社からの見積もりデモ・トライアル契約詳細は 学会運営にかかる費用 を参照。2-4. 予算計画参加費の設定(一般会員 / 学生 / 海外 / オンライン参加)想定参加者数 × 参加費 = 収入見込みシステム費・会場費・印刷費・人件費 = 支出見込みスポンサー収入の目標額学会本部からの補助金2-5. このフェーズでやりがちな失敗会場予約を後回しにする → 1年前でも有名会場は埋まっている大会長の負担を軽視 → 大会長個人に負担集中で本業に支障3. 開催10〜6ヶ月前: 基盤整備フェーズ実務的な準備が本格化するフェーズです。3-1. システム契約10ヶ月前の段階で 学術集会運営システムを契約 します。契約後すぐに初期設定(演題募集要項のシステム反映等)を始めます。3-2. 演題募集要項策定演題のテーマ・カテゴリー抄録の文字数・フォーマット査読方針(シングルブラインド / ダブルブラインド)提出締切・採択通知時期3-3. スポンサー営業学会の収入源として重要なフェーズです。スポンサーパッケージの設計(プラチナ / ゴールド / シルバー)既存スポンサーへの継続提案新規スポンサー候補へのアプローチ出展ブース・広告枠の販売3-4. ホームページ公開大会公式サイトのデザイン・コンテンツ演題募集ページ参加申込ページ(決済システム連携)スポンサー一覧3-5. このフェーズでやりがちな失敗システム初期設定の遅れ → 演題募集開始日に間に合わないスポンサー営業の後回し → 予算未達で大会規模縮小4. 開催6〜3ヶ月前: 演題募集フェーズ実質的な学会の中身が固まるフェーズです。4-1. 演題募集開始募集開始の周知(メール・SNS・関連学会経由)募集サイト公開募集締切のリマインド配信4-2. 査読体制構築査読委員の依頼・確定査読システムへの査読委員登録査読基準・スコアリングルールの周知4-3. 参加申込開始参加申込フォーム公開早期割引・通常料金の運用海外参加者の決済方法(クレジットカード・国際送金)4-4. プログラム確定査読結果に基づく採択演題確定セッション構成・座長確定招待講演者の確定タイムスケジュール作成4-5. このフェーズでやりがちな失敗演題募集締切の延長 → 後工程の全遅延につながる査読委員の人数不足 → 査読品質の低下、または期間延長5. 開催3〜1ヶ月前: 詳細準備フェーズ最終的な詰めの作業が集中するフェーズです。5-1. 抄録集制作採択演題の原稿確定編集・校正印刷会社入稿(紙版の場合)電子版生成詳細は 学会の抄録 を参照。5-2. 当日運営マニュアル作成スタッフ業務分担タイムライン詳細トラブル時の対応フロー緊急連絡網5-3. スタッフ研修受付業務の研修システム操作研修配信オペレーション研修(ハイブリッドの場合)5-4. リハーサル全体リハーサル(開催1〜2週間前)機材接続テスト配信テスト(ハイブリッドの場合)5-5. このフェーズでやりがちな失敗抄録集の校正遅延 → 印刷会社の納期に間に合わない前日リハーサルの会場未確保 → 当日ぶっつけ本番でのトラブル多発6. 開催1ヶ月前〜当日: 直前・開催フェーズ6-1. 直前1週間のチェックリスト参加者リスト最終確定名札・受付資料の準備完了機材搬入の段取り確認演者・座長への最終連絡緊急時連絡網の周知6-2. 当日運営受付スタート(開場1〜2時間前)セッション進行質疑応答の進行トラブル対応6-3. 緊急対応マニュアル事前に想定しておくべき緊急事態:配信機材の故障演者の急な欠席参加者の急病・怪我自然災害(地震・天候不良)7. 開催後(事後対応)開催後にも重要なタスクが残ります。7-1. 録画公開(オンデマンド配信)録画の編集公開期間の周知公開許諾・権利確認J-STAGE等への登録公開許諾の取得や配信プラットフォームの選定は、本番直前に慌てないよう、開催前から運用方針を整理しておくと安心です。7-2. アンケート集計参加者満足度調査改善要望の抽出次年度企画への反映7-3. 翌年に向けた振り返り各フェーズの実績 vs 計画良かった点・課題のドキュメント化次年度大会長への引き継ぎ資料作成7-4. 決算・会計収入実績(参加費・スポンサー)支出実績(システム費・会場費等)黒字 or 赤字の最終決算学会本部への報告8. チェックリスト以下は各フェーズの主要タスクをチェックリスト化した一覧です。12ヶ月前[ ] テーマ・コンセプト決定[ ] 大会長確定[ ] 主会場仮押さえ[ ] 予算計画書作成[ ] システム選定開始10ヶ月前[ ] システム契約[ ] スポンサー営業開始[ ] 大会公式サイト公開[ ] 演題募集要項策定6ヶ月前[ ] 演題募集開始[ ] 査読委員確定[ ] 参加申込開始3ヶ月前[ ] 採択演題確定[ ] 抄録集編集開始[ ] 運営マニュアル作成1ヶ月前[ ] 抄録集完成[ ] スタッフ研修[ ] リハーサル当日[ ] 受付開始[ ] セッション進行[ ] 緊急対応待機開催後[ ] 録画公開[ ] アンケート集計[ ] 決算[ ] 振り返り資料作成9. 期間別「やりがちな失敗」総まとめ各期間でよくある失敗と対策を一覧化します。期間やりがちな失敗対策12ヶ月前会場予約後回し1年前に必ず仮押さえ10ヶ月前システム契約遅延4ヶ月かかる前提でスケジュール6ヶ月前スポンサー営業遅延早期に営業計画を固める3ヶ月前演題募集締切延長原則延長しない方針を最初に明示(やむを得ない延長は短期間に留める)1ヶ月前前日リハーサルの会場未確保前日リハーサル用の会場予約を最初の会場仮押さえ段階で確保しておく当日緊急対応マニュアル不在想定シナリオを5つ以上事前準備事後振り返り資料未作成開催1ヶ月以内に必ずまとめるまとめ — 学会運営は「12ヶ月前からの逆算」が鉄則学会運営の成否は 最初の計画フェーズ で決まります。12ヶ月前から逆算してスケジュールを組み、各フェーズの締切を守ることが、当日の成功につながります。特に重要なポイント:会場予約は12ヶ月前 — 有名会場は早めに埋まるシステム選定は10ヶ月前から開始 — 検討に3〜4ヶ月かかる演題募集締切は原則延長しない — 後工程の連鎖遅延を防ぐ(やむを得ない延長は短期間に留める)リハーサルは前日または本番環境に近い条件で実施 — 当日のトラブルを最小化(前日リハーサル用の会場予約を最初の会場仮押さえ段階で確保しておくと安心)学会システムを活用することで、これらの工程を一気通貫で管理でき、運営工数を大幅に削減できます。学会運営の進め方でお困りの方へ「らくらくカンファレンス」では、演題管理〜参加登録〜配信〜オンデマンドまで、学術集会運営の各工程を支援。事務局の運営工数削減に向け、お気軽にご相談ください。関連記事学会の運営方法とおすすめスケジュール