学会では、ポスターを掲示して発表するポスター発表があります。このポスター発表ですが、オンライン学会の場合はどのように行うのでしょうか。今回は、オンライン学会(WEB学会)でのポスター発表を解説します。オンライン学会(WEB学会)のポスター発表とは通常のオフラインの学会では、自分のブースに印刷したポスターを掲示します。そのポスターを見せながら、内容に沿って研究内容を発表します。一枚に研究成果や伝えたい内容がまとまっているので、パッと見て内容がわかりやすく、参加者の興味を惹くことが求められます。ポスターが気になった通りすがりの人に質問されたり、そこから会話が始まったりすることもあります。そのため発表者もいろいろな気付きを得られ、次の研究計画を立てるのに役立ちます。これをそのままオンライン上に移行したのが、今回ご紹介するオンライン学会でのポスター発表です。このポスターは「デジタルポスター」とも呼ばれます。オンラインで開催するので、時間や場所にしばられないのが大きなメリットです。時間をかけて学会の現場まで足を運ぶ必要がないので、より多くの発表者と参加者が参加しやすくなります。国内はもちろん、海外にいても参加できます。オンライン学会(WEB学会)のポスター発表の形態オンライン学会ではWebサイトにポスターを掲示します。発表者(研究者)はオンライン会議ツールを使い、オンラインの画面上でポスターを参加者に見せながら発表します。参加者は画面上に表示されたポスターを見ながら発表を聞きます。参加者から質問があれば、オンライン会議ツールに設置されたチャット欄を使って、チャットでやり取りできます。もちろん口頭でのやり取りもOKです。オンライン学会(WEB学会)のポスター発表の方法オンライン学会のポスター発表の方法を見ていきましょう。まずオンライン学会の開催が決まると、主催者は学会の概要を今回の開催サイトにアップします。学会の概要は、今回の発表テーマや発表者一覧などです。すると各発表者のチャンネルのリンクが作られ、参加者にメールなどでお知らせされます。発表者は、事前に自分のチャンネルにポスターのデータをアップしておきます。学会当日に初めてその場でポスターを公開するのではなく、あくまでも学会より前の日に事前に掲示しておくのがポイントです。ポスターはスライドで数枚になることが多いので、そのまま順番に掲載するか、すべてのスライドを一枚にまとめることもあります。データ形式は学会によって異なりますが、PowerPoint(ppt)やPDFが多いようです。学会当日、発表者は自分のチャンネルで、事前にアップしておいたポスターを画面共有で見せながらオンライン会議ツールで発表します。オンライン学会(WEB学会)のポスター発表のコツオンライン学会でポスター発表をする際のコツを3点ご紹介します。初めてオンライン学会でポスター発表する方も、ぜひ参考にしてみてください。興味を持たれるタイトルにするオンライン学会では、自分の他にも多くの発表者がいます。今回の学会のWebサイト上に各発表者のタイトルやポスターが並んでおり、参加者はその中で気になるところに行き来します。そのため、タイトルを見た参加者に、「この内容面白そう」「これはぜひ詳細を聞いてみたい」と興味を持たれることが大切です。参加者が気になるようなキーワードを入れたり、あえて明確な答えを入れないようにしたりと、思わず発表を聞いてみたくなるようなタイトルをつけましょう。反対に、情報を盛り込みすぎてあまりにも長すぎるタイトルは避けたいところ。タイトルを見た参加者に、どのような内容の発表なのか伝わりづらくなるためです。レイアウトはシンプルにわかりやすくポスターのレイアウトの見やすさも重要です。研究結果を詳細まで見せたくなり、つい情報を詰め込みがちになってしまうかもしれません。しかしぎっしりと情報過多なポスター面は、参加者にとっては見づらく疲れるもの。どの部分が特に重要な情報なのかも、わかりづらくなってしまいます。そうならないためにも、ポスターのレイアウトは極力シンプルにわかりやすく、を心がけましょう。例えば、ポスター内の余白を意識して作ったり、PowerPointのメニューにある「配置」機能などを活用してオブジェクトを均等に並べたりするだけでも、すっきりと見やすいレイアウトになります。色も何色も使いすぎず、メインカラー1色+サブカラー2色の計3色ほどに留めておいたほうが、全体の統一感も出てまとまります。ポスターに載せられなかった情報に関しては、質疑応答時に質問された場合に答えられるよう、付録のスライドとして準備しておくと安心です。あくまでも重要な点だけを、見やすいようにポスター上にまとめるようにしましょう。チャットで質問を受けつけるオンライン学会はオンライン会議ツールを使って行うので、ツールのチャット機能もぜひ活用しましょう。オンライン学会の魅力の1つは、発表者と参加者が交流して議論しやすいことです。例えば発表が終わって質疑応答の時間を設けても、オンライン上ということもありなかなか手を挙げられない人も多いかもしれません。そこでチャットで質問を受け付ければ、短い文章で気軽に質問を送信できます。チャットのタイミングも、発表中いつでもすぐに気になったことを書き込めるので、より質問が出やすくなることも。これらはオンライン開催ならではの利点です。ぜひ活用して、より深い参加者との議論ができるようにしましょう。オンライン学会(WEB学会)のポスター発表の注意点最後に、オンライン学会のポスター発表で、注意すべきポイントを3つご紹介します。ポスターのデータ形式を確認まず事前に、納品するポスターのデータ形式を確認しましょう。学会によってそれぞれポスターのテンプレートが決まっていたり、サイズが明確に指定されていたりします。また、ポスターのデータ形式も指定されていることが多いです。PowerPoint(ppt)データやPDFが多いようですが、なかにはJPEG、PNGデータなどの学会もあります。もしデータ形式や大きさが違うポスターを納品してしまうと、発表当日に画面上にうまく表示されない可能性もあります。フォント設定に注意見落としがちなのがフォントの設定です。フォント設定も確認しておかないと、発表時に文字化けしたり、フォントが消えてしまったりすることもあります。フォントサイズは見やすい大きさに設定しましょう。フォントがあまりにも小さすぎると、いざポスターを表示したときに読めなくなってしまいます。フォントサイズは最低でも18、19pt程度が目安です。パソコンの画面上で、全画面表示したときに難なく読める程度の大きさにしましょう。またOS標準以外のフォントを使うと、ポスターを表示したときに文字化けすることもあります。特殊文字や記号なども要注意です。加えて、文字が正確に変換できないこともあるので、1つのテキストボックス内は必ず1つのフォントに統一します。すべて作成し終わったら、オンラインプレビューで、文字化けがないか改行がおかしいところはないか見切れている部分はないかなど一度確認しましょう。利益相反(COI)の開示についてポスターデータを事前に登録するときに、利益相反(りえきそうはん)の開示が求められることがあります。「利益相反(りえきそうはん)」とは、ある行為が一方への利益になるとともに、他方への不利益にもなること。英語では「COI(conflict of interest)」と呼ばれます。医学における利益相反とは、研究に従事するものとしての責任に、外部との関係で得られる利益が相反するため、「研究者として公正なのか」を第三者に疑われるようなリスクのある対立関係です。利益相反があること自体は問題ではありません。大切なのは、学会発表時に利益相反を明確に開示することです。利益相反の事例例えば共同研究で、企業から研究資金を提供されて実施された研究結果が、資金提供元の企業にとって有益、もしくは不利益になる可能性がある場合です。この場合、利益相反の開示を行わないと、「研究結果は、この企業からの資金提供によってバイアスがかかっているのではないか?」と懸念されるリスクがあります。同様に学会の発表でも、「この発表内容は、企業からの謝金でバイアスがかかっているのではないか?」と疑われるリスクがあります。これを回避するために、発表画面の中で利益相反の開示をしておく必要があります。利益相反の開示スライドに記載する内容利益相反の開示は、ポスターとは別に専用のスライドを作ることが多いようです。スライドは下記のように作成します。このように、団体名COI開示発表者名を明記したあとに、それぞれお金の項目ごとに該当する企業をすべて明記します。項目は上記例の他にも、原稿料、奨学寄附金などさまざまあるので、該当するものはすべて書きます。記載内容は学会によって指定されていることもあるので、確認しておきましょう。利益相反関係にある企業がない場合は、のように記載します。まとめオンライン学会でのポスター発表にはコツがあります。気を付ければ、遠方から参加できたりチャットで意見を交わしたりと、オンラインだからこそのメリットもたくさんあります。ちなみに学会なら、「らくらくカンファレンス」の利用もおすすめです。らくらくカンファレンスは、現役の研究者が監修した学会の開催システムです。オンライン学会でも多数のポスターを掲載できたり、ポスターごとにビデオ通話をして円滑なコミュニケーションができたりします。学会をスムーズに行いたい方は、ぜひチェックしてみてください。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|学会でのポスター発表をオンラインでも可能にするシステム