学会は、日頃の研究成果を発表して他の参加者と意見交換できる貴重な場です。せっかくの機会だからこそ発表を成功させたいところですが、初めての参加だと発表準備に迷いますよね。特に、発表で使用するポスターやスライドはまとめ方が難しく、作成に難航することもあるかもしれません。今回は学会で発表する方のために、学会発表の準備の方法やポスター・スライド作成のコツなどを解説します。学会とはそもそも学会とは、研究者が研究成果を発表し、他の研究者や参加者たちと議論を深める場です。普段なかなか会うことのない他の研究者や専門家と、意見交換したり交流したりすることも目的です。学会の開催方法の種類は、主に下記の3つに分けられます。開催方法開催場所メリット現地開催現地のみ参加者と直接交流や意見交換がしやすいオンライン開催(WEB学会)オンラインのみ・遠方からも参加できる・会場までの移動時間や交通費が不要ハイブリッド開催現地&オンライン参加人数を増やしやすい関連記事:【24年2月更新】オンライン学会(WEB学会)のメリットは?|種類や開催の注意点も関連記事:学会のハイブリッド開催方法は?現地開催と比較したメリットや注意点これらの3つの開催方法に加えて、発表の種類も主に2つに分けられます。発表の方法持ち時間の目安口頭発表ステージ上に発表者が立ち、スライド資料を見せながら発表する15分ほどの発表時間+質疑応答5分ほどポスター発表ポスター発表会場に自分のポスターを掲示して前に立ち、ポスターを使いながら発表する特に時間の区切りはなしポスター発表では、参加者は口頭発表のように着席しているわけではなく、会場内を自由に歩き回り、気になったポスターの前で足を止めて発表を聞きます。そのため、ポスターや発表内容が参加者の興味を惹きつける内容であることが求められます。学会発表までの事前準備の流れ学会の開催日までに発表者がやるべき準備を、流れに沿って解説します。発表者の事前準備の流れは、主に下記のとおりです。参加申し込み・参加費決済↓演題登録↓要旨作成・提出↓発表用のポスター・スライドの準備↓発表の練習ちなみに、学会開催までの運営側のスケジュールについては、下記記事も参考にしてください。関連記事:オンライン学会(WEB学会)の運営方法は?スケジュールや円滑に行うポイント関連記事:学会の運営方法とおすすめスケジュール!現地開催やハイブリッド開催版も参加申し込み・参加費決済学会の参加を決めたら、まずは参加の申し込みをしましょう。申し込み方法は学会によって異なりますが、指定された参加申し込み登録のWebサイトからオンラインで申し込むことがほとんどです。申し込みと同時に参加費も決済します。演題登録参加申し込みと参加費決済が済んだら、演題登録をします。学会によっては、先に演題登録をしてから、参加申し込みと参加費決済をすることもあります。演題登録は、学会開催日の半年ほど前から受付開始し、2ヶ月間ほど受け付けています。要旨作成・提出学会の要旨とは、学会の発表内容を簡潔にまとめた概要です。発表する内容の問題点や研究の方法、研究結果や意義などの重要点だけをまとめます。文字数は200~400文字ほどが多いです。提出した要旨は、要旨集としてまとめて印刷されて参加者に配布されたり、オンライン上で閲覧できたりします。発表用のポスター・スライドの準備次は発表の要となるポスターやスライドの作成に着手しましょう。口頭発表→パワーポイントなどで作るスライド資料ポスター発表→会場に掲示する大きなポスターを準備します。作成方法のコツは後述します。発表の練習最後に、発表の予行練習も欠かせません。できれば教授や友人・家族など第三者に聞いてもらいながら、当日を想定して発表練習しましょう。当日の発表時間に沿って、時間配分を決め、持ち時間内に発表が終えられるよう練習します。声の大きさやスピードも意識しましょう。関連記事:学会で使えるタイマーを紹介!時間管理(タイムキーピング)のポイントも発表の流れとしては、まず研究の背景(なぜこの研究をしようと思ったのか、きっかけは何だったのかなど)から話し始めることで、聞いている側もそのあとの発表内容が理解しやすくなります。またできるだけ簡潔に、重要なポイントを中心に話すと聞きやすいです。また当日慌てないためにも、質疑応答まで練習しておけるとベターです。予行練習で聞いている第三者がいれば、実際に質問を受け付けてみましょう。実際の質疑応答では、想定外の質問をされる可能性もあります。回答に詰まった場合は、曖昧な回答はせず、質問内容を再度聞き直したり、後ほどメールで回答する旨を伝えたりすれば問題ありません。【追加で解説!】発表ポスター・スライドを作成するコツ・注意点発表で使用するポスター・スライドは、どのような点に気を付けて作成すれば良いのでしょうか。ポスター・スライドを作成する際のコツや注意点をいくつか解説します。構成の流れを意識するポスターやスライドを作成する前に、まず発表内容の構成を考えます。構成の順序はほぼ決まっており、①研究の背景②研究の目的③研究・実験方法④研究・実験結果⑤考察・結論が基本です。それぞれ簡単に解説します。①研究の背景今回発表する研究を始めたきっかけです。この研究をすることでどのような新しい発見がありそうか、今この研究をする必要性は何かなど、研究の意義をシンプルに伝えましょう。②研究の目的今回の研究で目指すゴールです。何を明らかにするための研究なのかを、簡潔に書きます。1つの研究に対して1つの目標だけに絞るのがポイントです。③研究・実験方法「②研究の目的」を達成するために、実際にどのような方法を行ったかを書きます。発表を聞いている側がイメージしやすいように、・実験で使用した機器やソフトウェア・分析対象のデータの取得方法などをできるだけ具体的に明記します。④研究・実験結果「③研究・実験方法」で研究・実験したことで、どのような結果が得られたかを書きます。できるだけ定量のデータや数値、客観的な指標などを使い、誰が見ても客観的にわかりやすいように結果を書きましょう。文章だけではなく、図表やグラフなどを入れるのもおすすめです。「この結果について私はこう思う」「おそらくこの結果の意味はこうだろう」のように、私見は入れないように注意してください。あくまでも客観的な事実だけを端的に記載します。⑤考察・結論「④研究・実験結果」を踏まえて、明らかになったこと、考えられることなどを記載します。冒頭で記した「②研究の目的」に対し、研究・実験を経て結果的にどうなったか、何が判明したかを書きましょう。最初の想定通りの結果だったのか、それとも想定外の結果になったのかを書くのがポイントです。結果を踏まえて、今後検討すべき課題も記しましょう。シンプルなレイアウトにするスライドもポスターも、情報を詰め込みすぎず、シンプルで見やすいレイアウトにすることが大切です。スライドとポスター、それぞれのレイアウトのコツは下記のとおりです。スライドのレイアウトのコツ口頭発表用のスライドは、1枚が映し出される時間はほんのわずかです。1枚のスライドにだらだらと長文を書いたり、いくつも図版を入れたりしても、見ている側は目で追いきれません。スライド1枚あたり1つだけのキーワードや図版を大きく表示し、時間は1枚あたり1分ほどの説明で済むくらいに情報量を調整しましょう。ポスターのレイアウトのコツポスター発表用のポスターでは、参加者が会場でパッと目にしたときに興味を惹くようにするためにも、遠目で見ても重要なポイントがわかるシンプルなレイアウトを心がけましょう。研究経緯や結果をできるだけ詳細にポスターに載せたくなってしまうかもしれませんが、ぎっしりと細かく情報が詰まったポスターは見づらいもの。特に注目すべきポイントもわかりづらくなってしまいます。見やすいレイアウトにするためには、ポスター全体の余白に気を付けましょう。ポスターの端ぎりぎりまで文章や図版が詰まっていると見づらいので、ほどよく余白を残します。A0サイズのポスターであれば、ポスターの外側に一周3~5cmほどの余白を作るとすっきり見えます。また、参加者が読む流れも意識してレイアウトを決めると、格段に読みやすくなります。縦長のポスターは、基本的に左上から右下に向かって読んでいくので、その流れを意識してレイアウトを配置していきましょう。ポスターで使う色も、あまりにもカラフルだと見づらくなります。メインカラー1色+サブカラー2色ほどで、計3色くらいにまとめたほうが見やすくなるのでおすすめです。フォントや文字サイズに注意するフォントと文字サイズも要注意です。1つのポスターやスライド内で複数のフォントが混在していると、読みづらくなってしまいます。日本語と英語それぞれ1種類ずつフォントを決め、すべて統一することで格段に読みやすくなります。加えて、文字の色も統一しておきましょう。あまりに多くの色の文字を並べると、目がチカチカして読みづらくなります。どこが重要なポイントかも見つけづらいです。文字の色は、メインの黒+強調用の1色(赤など)で、計2色ほどにしておくと見やすくなります。また文字のサイズにも気を付けましょう。前提として、本文、見出し、図表の文字などは、要素ごとにそれぞれ文字サイズを統一します。タイトルや見出しと、本文の文字サイズに差をつけることで、全体を見たときにメリハリが出ます。文字サイズは、・タイトル:70~90pt・見出し:60~70pt・本文:30~40pt(ポスターの場合)/20~30pt(スライドの場合)ほどが目安です。ただし会場規模やポスターの大きさ、情報量などによっても異なるので、適宜調整してください。加えて、ポスターやスライドはパソコンで作成することがほとんどですが、パソコン上で作成していると実際に印刷されたポスターと大きさのイメージが変わることもあります。印刷する際は、まずパソコン上で表示を100%にして、実際に印刷された場合の文字の大きさを確認しましょう。パソコンの画面から離れた位置で、遠くから読めるか確認するのもおすすめです。データ形式やサイズを確認するスライドもポスターも、学会によってデータ形式や大きさ、枚数などが決まっていることが多いので、必ず事前に確認します。ポスターは、A0サイズ(841×1,189mm)の大きさが多いです。A0とは、縦にしたA4を縦横4枚ずつ並べてつなげたサイズです。オンライン上にポスターを掲示する場合も、ポスターの大きさやデータ形式が間違っていると正しく表示されないことがあります。ちなみに学会のポスターを印刷したい方は、キンコーズの学会発表ポスター専用発注サイトがおすすめです。以下のリンクに申し込み・入稿の案内があるので、ぜひチェックしてみてください。キンコーズで印刷する「らくらくカンファレンス」ではスムーズな学会発表をサポート学会の発表は準備が多く、ポスターやスライド作成にも時間がかかりますが、本記事で紹介したコツを抑え、1つずつ確実に対応していけば問題ありません。学会の当日は落ち着いて自信をもって発表し、有意義な時間にしましょう。学会運営のサポートシステム「らくらくカンファレンス」は、学会当日までの運営者の事前準備や、当日の発表を徹底サポートします。ポスターをPDFデータにしてオンライン公開できたり、録画した発表動画をアップロードし、オンデマンド配信できたりします。発表ごとにコメント欄やビデオ通話機能もあるので、オンライン上でも質疑応答や議論がしやすいのも利点です。詳しくはこちら▼らくらくカンファレンス|学会前の準備から当日の発表まで、1つのシステムでわかりやすくサポート