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2026/10/6

学会抄録集とは?作り方・編集・印刷・電子版の実務ガイド

学会抄録集とは?作り方・編集・印刷・電子版の実務ガイド

学会抄録集の制作は、演題数が増えるほど体裁統一や校正の負担が大きくなり、編集ミス・校正漏れ・印刷遅延 につながることがあります。Word原稿の体裁統一に時間がかかる、校正最終段階で著者校正が間に合わない、印刷会社の入稿締切に間に合わない——こうしたトラブルを避けるには、最初に制作フロー全体を設計 することが必要です。

本記事では、抄録集制作の全工程を実務目線で解説 します。原稿収集の3パターン、編集・校正の効率化、紙版・電子版の使い分け、制作費用の見積もり項目まで、初めて担当する事務局・編集委員会向けに必要な知識を整理しました。

この記事を読むとわかること:

抄録集とは(紙 / 電子 / 両方)

抄録集(しょうろくしゅう)とは、学会で発表される演題の要旨(抄録)を一冊にまとめた印刷物または電子媒体 です。学術集会の前後を通じて参加者・非参加者の双方が参照する重要資料です。

抄録集の形態3パターン

形態内容メリットデメリット
紙版のみ印刷製本した冊子慣習的・読みやすい印刷・配布の手間がかかる
電子版のみPDFまたはWeb閲覧即時公開・検索しやすい紙志向の参加者から不評の可能性
紙版+電子版両方発行参加者ニーズに対応紙と電子の両方の工程が必要

紙版・電子版の選択は、参加者の利用環境、配布方法、予算を踏まえて決めます。紙版を継続する学会も、電子版のみに切り替える学会もあります。

抄録集と要旨集の違い

「抄録集」と「要旨集」は実質的に同義で使われることが多く、呼称や字数の規定は学会ごとに異なります。

本記事では「抄録集」を扱います。論文集の制作とは別フローです。

制作フローの全体像

抄録集制作は、開催日から逆算して各工程の期限を決めます。日数は演題数・査読の有無・印刷会社の工程によって変わるため、次の順に後ろから固めていきます。

順序決めるもの逆算の起点
1紙版の配布・電子版の公開開催日
2印刷入稿印刷会社の所要日数
3校正完了著者校正の往復にかかる日数
4編集開始・原稿確定体裁統一にかかる工数
5採択通知・査読査読者の人数と担当件数
6演題募集の開始・締切上記すべてを満たせる時期

演題募集の要項に書く項目と、募集期間・締切の決め方は、学会の演題募集要項の書き方|記載する項目と、抜けやすいところと演題登録期間と締切の決め方|開催日から逆算して設計するで扱っています。

印刷会社の納期と、査読に必要な期間を先に確認したうえで募集期間を決めます。この2つは後から縮めにくい工程です。

演題の募集から採否通知までの流れは演題登録はどう進むのか|募集開始から採否通知までの実務、学会準備全体の時系列は学会運営スケジュール完全ガイドで整理しています。

各段階の遅延が後ろの工程に波及します。印刷・公開に間に合う最終期限を先に決め、募集延長の可否・判断者・告知方法を事前に定めておく ことが重要です。

原稿収集の方法3パターン

抄録原稿をどう集めるかで、その後の編集工数が大きく変わります。

パターン1: Word・PDFテンプレ提出

Word等のテンプレートで原稿を提出してもらう方法です。

メリット:

デメリット:

→ 担当できる人数が限られ、原稿の体裁統一を編集側で吸収できる規模に向く

パターン2: Web入力フォーム

専用のWebフォームで原稿を直接入力させる方法。

メリット:

※ 対応できる機能はフォームやシステムによって異なるため、事前に確認が必要です。

デメリット:

→ 文字主体の原稿を集める場合に検討できる

パターン3: 専用システム(演題登録システム連携)

演題登録から抄録収集まで一体化したシステムを使う方法。

メリット:

※ 冊子・PDFの組版そのものは、利用する組版ツールや制作委託先の対応範囲を確認します。

図表・LaTeX原稿への対応可否はシステムによって差があるため、対応範囲を事前に要確認です。

デメリット:

→ 原稿件数が多く体裁統一の負担が大きい場合や、継続開催で毎回同じ工程を繰り返す場合に向く

編集・校正の実務

原稿が集まったら編集・校正に入ります。工数がかかりやすい工程です。

体裁統一(フォント・段落・図表番号)

統一すべき項目:

これを 編集委員会で先に「執筆要綱」として明文化 し、原稿募集時に演者へ配布すると、体裁のばらつきを抑えやすくなります。

校正フロー

以下は校正体制の一例です。担当者と確認の順序は、大会の体制に合わせて決めます。

ステップ担当内容
第1校編集委員会体裁統一・誤字脱字・参考文献書式
第2校事務局レイアウト確認・索引チェック
著者校正演者本人専門用語・データ・図表の確認
最終校編集長全体の整合性確認

著者校正を推奨します。 省略する場合は、確認・修正の責任範囲を明示します。編集側だけでは専門内容の誤りを見落とす可能性があるためです。

索引・目次の自動生成

索引・目次の生成は、利用する組版ツールや制作委託先の対応範囲によります。Wordベース運用の場合:

紙版の印刷と電子版の発行

紙版: 印刷会社の選び方・部数の決め方

印刷会社の選定基準:

部数の決め方:

電子版: PDF / Webブラウザ / アプリ

形式メリットデメリット
PDF印刷物と同じ体裁・配布しやすい端末によっては読みづらい場合がある
Webブラウザ検索・更新に対応しやすい制作費用と体裁の自由度に制約
専用アプリオフライン閲覧や通知に対応する場合がある制作費用がかかりやすい

形式は、検索のしやすさ・公開後の更新の有無・参加者の通信環境・予算を踏まえて選びます。費用は制作・開発・印刷の条件によって変わります。

J-STAGE / 機関リポジトリへの登録

学会抄録集を J-STAGE または 機関リポジトリ に登録すると、長期保存とアクセス向上が期待できます。

DOI(デジタルオブジェクト識別子)の付与により、引用しやすくなります。

抄録集制作の費用の考え方

費用は演題数・ページ数・印刷部数・編集の委託範囲によって大きく変わります。見積もりを依頼するときは、次の条件をそろえて伝えると比較しやすくなります。

見積条件確認する内容
演題数・総ページ数想定演題数と、1演題あたりのページ数
印刷部数配布対象者数と予備の考え方
印刷仕様判型・用紙・カラー/モノクロ・製本方法
編集の委託範囲体裁統一・校正をどこまで委託するか
電子版の仕様PDFのみか、Web公開や検索機能を含むか
納品・配送納品先・現地搬入の有無

費用の内訳

見積もりでは、演題登録等のシステム利用料と、編集・組版・印刷・配送等の制作費を分けて確認します。制作費の主な項目は次のとおりです。

抄録集制作で注意したい失敗例

想定しておきたいトラブル例です。

失敗1: 演題募集締切の延長で全工程が後ろ倒し

締切の延長を重ねると、編集・校正・印刷の後続工程の時間が不足し、開催直前まで抄録集が仕上がらないことがあります。

対策: 印刷・公開に間に合う最終期限を先に決め、募集延長の可否・判断者・告知方法を事前に定めて おきます。延長する場合は、既に登録を終えた人が不公平感を持たないよう、理由を添えて速やかに告知します。

失敗2: 著者校正の返信遅延

著者校正の返信が期限までにそろわないことがあります。

対策:

FAQ

Q1: 抄録集と要旨集の違いは?

実質的に同義として使われることが多いですが、学会によっては「要旨集」は抄録より長い詳細版を指すことがあります。学会内での定義を確認してください。

Q2: 著者校正は必須?

推奨します。編集側だけでは専門用語・データ・図表の誤りを見落とす可能性があります。省略する場合は、確認・修正の責任範囲を事前に明示しておきます。

Q3: 電子版だけで紙を作らないのはあり?

ありです。ただし、紙での閲覧を前提とする参加者層がいる場合は、段階的な移行を検討してください。

Q4: 公開後の修正対応は?

電子版は公開先の訂正方針に従い、訂正履歴や正誤表で変更内容を周知します。J-STAGEや機関リポジトリに登録している場合は、それぞれの訂正手順を確認します。紙版は正誤表などで訂正し、再印刷する場合は修正を反映します。

Q5: 抄録集をJ-STAGEに載せるには?

発行機関からの申し込みが必要です。申し込みから公開までは2〜3か月程度が目安とされているため、開催スケジュールから逆算して早めに動きます。条件や手順はJ-STAGE公式「サービス利用申込方法」を確認してください。

まとめ — 抄録集制作の成否は「最初の設計」で決まる

抄録集制作のトラブルは、演題募集前の設計段階 で避けられるものが少なくありません。

これらを最初に整理しておくと、後工程の編集・校正・印刷の混乱や遅延を抑えやすくなります。

担当人数・原稿形式・査読の有無・編集負担を見て、手作業での吸収が難しいと判断した場合は、演題登録・査読をシステムで管理し、確定データを編集・組版工程へ渡す形 が選択肢になります。


学会抄録集の制作でお困りの方へ
「らくらくカンファレンス」では、演題登録から査読・採択までをオンラインで一元管理し、確定した演題データを CSVで出力 できます。抄録集の制作に必要な元データを一括で書き出せるため、編集・組版作業の準備がスムーズになります。

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執筆者

平 由紀子

株式会社AGRI SMILE
らくらくカンファレンス カスタマーサポート・セールス担当 / Seeds-Hub コミュニティ運営
年間60件以上の学会運営に関するご相談に対応。学会DXの現場知識をもとに、研究者と企業をつなぐコミュニティ「Seeds-Hub」の運営にも携わる。

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