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2026/9/29

医学系と社会福祉系で違う学会運営|査読・体制・システム導入の考え方

医学系と社会福祉系で違う学会運営|査読・体制・システム導入の考え方

学会運営について調べていると、「準備は1年前から」「査読は複数名で」といった説明に出会います。ただ、それが自分の学会にそのまま当てはまるとは限りません。

この記事では、医学系と社会福祉系という2つの分野を取り上げ、運営の進め方がどう違うのかを整理します。分野全体の運用を網羅するものではなく、実務でよく挙がる相違点を確認する目的でお読みください。

なぜ分野によって運営が変わるのか

学会の運営が分野で変わる理由は、大きく3つあります。

ひとつは演題の性質です。症例を報告するのか、実践事例を共有するのか、研究成果を発表するのかによって、査読で見るべき点が変わります。

もうひとつは規模です。参加者数と演題数の桁が違えば、必要な仕組みも変わります。

そして分野によって重視されやすい実務です。医学系では利益相反の開示や専門医の単位認定が、社会福祉・教育系では情報保障の配慮が、それぞれ具体例として挙がります。なお情報保障は分野を問わず確認すべき事項であり、以下は一例としてお読みください。

査読の重さが違う

最も差が出るのが査読です。

医学系の学会では、点数で評価する仕組みが前提になっていることが多くなります。評価項目としては「新規性・独創性」「研究の妥当性(方法・データの信頼性)」「発表内容の明確さ・分かりやすさ」「学会のテーマとの関連性」の4項目を軸に、点数評価と自由記述コメント欄を組み合わせる形が扱いやすい設計です。

一方、社会福祉系の学会では、システムまたはメールで抄録(アブストラクト)を提出し、学術誌の論文のような厳しい査読ではなく、倫理的配慮がされているか、形式を満たしているかなどをプログラム委員(教員)が手分けしてチェックする運用も見られます。こちらは「点数をつけて選別する」というより、要件を満たしているかを確認する性格が強い運用です。

ただし、この違いをそのまま「医学系は厳格、社会福祉系は簡易」と一般化することはできません。学術誌の論文査読と比べた場合の表現でもあり、実際の厳格さは学会ごとに異なります。同じ「査読」という言葉でも、想定される水準が分野や学会によって異なる、という点を押さえておくと、他分野の情報を読むときに誤解が減ります。

査読体制を準備する時期については、学会運営スケジュール完全ガイドで確認できます。

運営体制のかたちが違う

運営体制についても、分野によって捉え方が変わります。

医学系の学会事務局では、体制を人数で捉える見方が多くみられます。1人体制の場合は、とにかく「抱え込みすぎないこと」が重要になります。複数人の場合は「誰が何を担当しているか」の役割分担と情報共有が要点になります。事務局という職能を軸にした捉え方です。

社会福祉系の学会では、開催校が持ち回りで担当する構造が見られます。開催校の教員数名から十数名が「大会実行委員会」を作り、本業である教育・研究と兼務で運営し、当日の案内や受付はその大学の大学院生や学部生をアルバイトとして動員する形です。

この2つは対立する話ではなく、説明の粒度が違うと捉えるのが正確です。どちらの体制が分野ごとに一般的かを一概に決めることはできません。自分の学会がどちらの形なのかは、学会本部の規程を確認するのが確実です。

システム導入の判断基準が違う

システムをいつ導入すべきかについては、異なる指標が用いられます。

ひとつは件数で判断する考え方です。「参加登録・演題登録の件数が三桁を超えるかどうか」を目安にする見方があります。

もうひとつは参加者数で捉える考え方です。「参加者が1,000人を超えるあたり」がシステム化の必須ラインだとする見方もあります。

ここで注意したいのは、この2つは単純に比較できないという点です。片方は登録件数、もう片方は参加者数で、数えている対象が違います。どちらが正しいという話ではありません。

ただ、判断の指標が複数ありうることは参考になります。演題の査読作業が重ければ登録件数が効いてきますし、参加者への対応が中心なら参加者数が効いてきます。

自分の学会でどちらの負荷が大きいかを考えると、どちらの指標で判断すべきかが見えてきます。費用の目安については学術集会運営システムの料金・費用比較をご覧ください。

医学系で重くなりやすい、COIと専門医単位

医学系の学会では、演者・座長からの利益相反(COI)申告書の提出・管理が必須となるケースが多くあります。提出漏れがあると発表自体ができない規定になっていることもあるため、事前のリマインドと提出状況の一覧管理が重要になります。

さらに、専門医制度に基づく単位認定がある場合は、出席証明の運用設計と、学会終了後の単位発行手続きも必要になります。

これらは演題登録や参加登録とは別に管理が要る項目です。医学系の学会でシステムを検討する際は、この2つに対応できるかを確認事項に含めておくと、後の手戻りが減ります。

社会福祉・教育系で重くなりやすい、情報保障への配慮

一方、社会福祉・教育系の学会では、情報保障への配慮が実務として挙がります。

手話通訳者は、ろうの方々が各自で手配するのではなく、学会側で手配するのが基本です。また、後天的ろう者のなかには手話がわからない方もいるため、要約筆記者を用意する場合もあります。

加えて、学習障害のある方に配慮したUDフォントの使用や、色覚障害のある方が識別しやすい配色をスライドに用いるといった取り決めを設けている学会もあります。

現在のところ、こうした対応は福祉・教育などの領域で見られるもので、分野を問わない標準的な対応とまではいえません。しかし、2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法は、民間事業者等(私立の学校等も含まれます)に対する「合理的配慮の提供」を努力義務から義務へと変更しました。学会運営を受託するPCOもこの「民間事業者」に含まれるため、今後は分野を問わず標準的な対応として求められていく流れが来る可能性もあります。この配慮は会場設営や進行だけでなく、オンライン開催に切り替える場合の設計にも関わってきます。

分野が違っても共通していること

ここまで違いを見てきましたが、分野を問わず共通する点もあります。むしろ、こちらの方が実務では役立ちます。

プログラム編成が最も重い

医学系でも社会福祉系でも、プログラム編成が最も時間のかかる工程として挙がります。医学系では多くの先生方の意見を集約する調整の重さが、社会福祉系では時間割のパズルと重複チェックの煩雑さが、それぞれ負担として指摘されます。切り口は違っても、同じ工程が重いという点は共通しています。

準備は1年から2年前に始まる

医学系では「開催の1年〜1年半前から動き始めるのが理想」、社会福祉系では「2年前、遅くとも1年半前には動き出す」と、いずれも同程度の期間が目安になります。

ハイブリッド開催では座長とは別に補助者が要る

医学系では、配信担当は司会・座長とは別に専任を置き、機材トラブル時にすぐ対応できる体制にしておくと安全です。

社会福祉系でも、座長の負担は課題になります。ハイブリッド開催の際は、音声・システム・カメラなどのIT担当者とは別に、チャットの質問内容の中から意義のある質問のみ拾い、座長へメモを渡すなどの補助者を付けるのが望ましいです。この役割は、その学問分野に詳しい教員が担うケースが多くみられます。

分野は違っても、ほぼ同じ結論になります。 ハイブリッド開催を検討している場合、この体制は準備しておく価値があります。

自分の学会をどう考えるか

分野差を踏まえたうえで、確認すべきことは3点です。

1. 査読にどこまでの厳格さを求めるか

点数評価が必要なのか、要件確認で足りるのか。ここが決まると、必要な仕組みが変わります。

2. 分野固有の実務があるか

利益相反の管理、専門医単位、情報保障。該当するものがあれば、システム選定の確認事項に加えます。

3. 負荷の中心はどこか

演題の処理が重いのか、参加者対応が重いのか。これによって、システム導入を判断する指標が変わります。

分野による違いはありますが、プログラム編成の重さや準備期間の長さは共通しています。他分野の情報でも、どこが共通でどこが固有かを見分けられれば参考になります。

システムの比較検討を始める段階であれば、学術集会運営システムおすすめもあわせてご覧ください。

執筆者

平 由紀子

株式会社AGRI SMILE
らくらくカンファレンス カスタマーサポート・セールス担当 / Seeds-Hub コミュニティ運営
年間60件以上の学会運営に関するご相談に対応。学会DXの現場知識をもとに、研究者と企業をつなぐコミュニティ「Seeds-Hub」の運営にも携わる。

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